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2010年1月6日水曜日

【ホンヨミ!0105④】系統樹思考の世界【岸本】


 筆者の専門である生物学をベースに、歴史学や哲学などを引きながら系統樹思考について説明した不思議な一冊。


 筆者は系統樹思考とは別の概念として「分類思考」を挙げています。これは物事の一時点の現象に着目して分類するものです。分類思考と系統樹思考の異なる点は、分類思考が一時点の現象に着目しているのに対して、系統樹思考では一時点の現象から歴史的な文脈を推測して、共通の「根」を推測するという点にあります。図で表すと以下の通りです。

 図の分類思考ではABCDはそれぞれ別の分類項目に見えます。しかし、系統樹思考を用いることで意外な繋がり(DとBが近い、など)を発見することが出来ます。

 この系統樹を発見するには筆者は演繹(induction)でも帰納(deduction)でもなく「アブダクション」が必要だとしています。手がかりから推測される仮説を導き、それが一番現象を説明するかどうかを確かめるという方法です。

 これはプロトタイピング、ひいてはデザイン思考に通じるものがあります。(ここら辺はKMDの奥出先生の著書やブログなどが非常に充実しています)

 学問というのは現象を研究しながらひたすら系統樹――それはプロトタイプともフレームワークとも言い換えられますが――をアブダクションによって作り上げ、その検証を行う(より多くの現象について適切に説明できているか)ことなのではないか、とこの本でなされている学問横断的(特にいわゆる理系科目)な議論を読んで感じました。

【ホンヨミ!0105③】ビジネスで失敗する人の10の法則【岸本】


 世の中に数多有る成功のノウハウ本とは真逆の、反面教師的な一冊。

 本書の著者であるコカコーラの元社長ドナルド・R・キーオはMBAなどとはほど遠い出自の人で、海軍に入隊後、一応大学は出たものの(哲学科)、地元のアナウンサーをやったり、食品会社に務めていたりしていました。

 この食品会社がたまたまコカコーラに買収されたためコカコーラに入社したというまさしく「傍流も傍流」な出自の人でした。

 法則は以下の通りです。(11項目あるのはご愛嬌)


  法則1(もっとも重要) リスクをとるのを止める

  法則2 柔軟性をなくす

  法則3 部下を遠ざける

  法則4 自分は無謬だと考える

  法則5 反則すれすれのところで戦う

  法則6 考えるのに時間を使わない

  法則7 専門家と外部コンサルタントを全面的に信頼する

  法則8 官僚組織を愛する

  法則9 一貫性のないメッセージを送る

  法則10 将来を恐れる

  法則11 仕事への熱意、人生への熱意を失う


 これをまとめるならば


  リスクをとる(1, 10)

   (リスクをとるために)

    - 会社をまとめる(9, 11)

    - 社内の意見を聞く(3, 6, 7)

    - 変化に対応する(2, 4, 8)

    - 対外的な信頼を得る(5)

 

 という感じでしょうか。反面教師から見ても導きだされる結論が似てくるということが興味深いです。世界の大企業はやはり理にかなってました。

 ただ、法則5についてはやや異論があって、行動によって社会全体のルール自体を変えていくGoogle的な方法論が(特にネット上では)有効なのではないかと思います。対外的な信頼を得ることが目的であって、反則かどうかは手段に過ぎません。信頼ベースであれば社会のルールすら変えることが出来るのではないでしょうか。

2010年1月5日火曜日

【ホンヨミ!0105②】2030年メディアのかたち【岸本】


 メディアコムでも授業を担当されている元日経の坪田知己さんによる一冊。
 インターネットの発達の歴史やメディア史などのマクロな視点と記者の足を活かしたミクロな視点が混ざっていて面白いです。

この本で述べられていることは以下の4つです

1. 情報社会の主導権は供給側から需要側へ

2. メディアと社会・組織の構造は伴って変化する

3. メディアは「多対一」へ変化していく

4. 情報の信頼の確保



1. 情報社会の主導権は供給側から需要側へ

 これは他ならないインターネットの普及による情報の爆発によって共有過多になったために主導権が移ったと言えます。



2. メディアと社会・組織の構造は伴って変化する

 これは以下の図にまとめられます。メディアと構造の変化のどちらが先かは一概には言えませんが、伴って変化するということには一定の説得力があります。

3. メディアは「多対一」へ変化していく

 これは1と2の帰結であると言えます。

 

 一対多:マスメディア(情報は一方通行)

 多対多:ネットメディア(双方向)

 多対一:エージェントメディア(また一方通行?)

 

 現状のネットメディアでは情報は双方向に流れるようになり、また必要な情報も手に入りやすくはなりました。しかし、意思伝達、あるいは検索のための取引費用が膨大になってしまいました。

 そのため必要な情報のみをより効率的に伝える必要が出てきました。これは編者となる緩衝剤が必要であるということです。こうした編者のことを筆者はエージェントと呼んでいます。

 この編者は様々な方法で既に実現していると言えるでしょう。例えば、ニュースサイトのカスタマイズ、あるいはRSSリーダー、またあるいはクラウドソーシングによるタグ付けなどです。タグ付けの方法についても様々あり、弟子筋にあたる濱野智史さんのこの論考も興味深いです。



4. 情報の信頼の確保

 筆者はまず情報の信頼を4つに分類しています


 信頼の4パターン(一部改)

 - 権威による信頼

 - 「世間」による信頼

 - 友人による信頼

 - 自己の体験による信頼


 これから従来のメディアだけでなく市民メディアがいかにして信頼を築き従来のメディアの代替メディアとなることができるかということを論じています。



 この本を読んでいて常に頭の中にあったのはTwitterのことでした。Twitterが万能なエージェントを務め、また従来のメディアに代替するとまでは思いませんが、こうしたマイクロブロギングでなおかつ一方的に「フォロー」するという仕組み(アーキテクチャ)が次世代のメディアをある程度予見していると言えるでしょう。『Twitter社会論』で登場した属人性という概念が信頼を生み、ニュースソース、編集者としての社会的な価値を持つことを考えると、現在のTwitter及び同様のマイクロブログサービスのアーキテクチャ及び普及の過程、ロックイン戦略などを比較することで今後のメディアのあり方を予言することが出来るのではないかと考えました。

2010年1月4日月曜日

【ホンヨミ!0105①】What I Wish I Knew When I Was 20【岸本】


 ゼミでの人生に対する問題意識と非常にリンクしている一冊。

 

 書いているのはスタンフォード大学d.schoolのTina Seelig。日本の20歳がどれだけ読んでいるかはともかく、読んで損は無いと思います。とにかく金言だらけ。(ジョブズのスピーチとか先生の去年の贈る言葉とリンクします)多少分からない英単語を読み飛ばしてもどうにか読めるので、英語で何か読みたいという人にもお勧め。(自分的には恥ずかしながらこれが完読した最初の英語の本です笑)

 あと、d.schoolのケースの内容が単純に面白いので、自分だったらどうするかと考えながら読むのも良いと思います。とにもかくにも、就活の途中段階でこの本にめぐりあえたのは良かったと感じています。


 要点を一言で表すと「Give yourself permission to embrace some uncertainty.(不確実性を受け入れるようにしなさい) 」ということ。


 もう少し細かく見ていくと以下のようになります


Give yourself permission 

- to challenge assumptions(引き受けることに挑戦する)

- to look at the world with fresh eyes(斬新な視点で世界を見つめる)

- to experiment and fail(実験、失敗をする)

- to plot your own course(自身の進路設計をする)

- to test the limits of your abilities(能力の限界を試す)


- to challenge assumptions(引き受けることに挑戦する)

 これは機会に対してオープンでいること、機会を十分に活かすこと、身の回りの環境に注意を払う(外国人旅行者のようにふるまう)こと、出来るだけ多くのポジティブなインタラクションをとることなどが機会をより多く得ることに繋がるとしています


- to look at the world with fresh eyes(斬新な視点で世界を見つめる)

 まさしくデザイン思考やブルーオーシャン戦略に繋がるところです。

 ニーズの発見に関してはこんな文があったので引用します。

The key to need finding is identifying and filling gaps -- that is, gaps in the way people use products, gaps in the services available, and gaps in the stories they tell when interviewed about their behavior.

 また、ルールは最低限の共通了解なので、しばしば疑ったり、破ったりすることも必要だとしています。


- to experiment and fail(実験、失敗をする)

 ここらへんはいかにリスクをとり、失敗から学ぶかが重要とされています。もちろん自分の失敗はもとより、失敗を避けるためには他人の数多くのロールモデルを見ることも重要だと説いています。


- to plot your own course(自身の進路設計をする)

 就活生としてはここがかなりビビッと来ました。自分の役割を探すには、「自分のスキルがあること」と「自分が好きなこと」、そして「それが社会に必要とされているか(市場があるか)ということ」3つの相互作用が重要だということです。

 1. スキルがあって社会に必要とされているだけでは仕事を楽しむことは出来ない。2. 自分にスキルがあってそれが好きであるのみで社会に必要とされていなければそれで食っていくことは出来ない。3. 自分が好きで社会に必要とされていても、自分にスキルがなければ自分がやる価値はない。

 

 全てが揃うことこそ、自分にとってベストな結果を生む進路の選択なのでしょう。ただ職業選択のみが全てではないので、これもまた1つの考え方に過ぎません。それを踏まえた上での人生設計が必要だと感じました。(1番は家庭や趣味という別の領域を生き甲斐とすることでルールは変わるし、2番は世界的なネットの普及によるニーズのロングテール化でチャンスが広がったと言えるでしょう。また3番は従来よりもスキル獲得の機会は開かれていると言えるのではないでしょうか?)


- to test the limits of your abilities(能力の限界を試す)

 ここでは、first-moverであることや、オーバーアチーヴを達成すること、チームプレーヤーでいること、チームの目標と各個人の目標、そしてその手段と各個人のスキルのalinementをすることが重要であるとしています。チームを大事にするというのは、世界は思ったよりも狭いので、また巡り会う機会はいつか必ず訪れるからだそうです。

 

 関連ですが、おそらく日本で一番Seeligに詳しいと思われるSFCのインキュベータの牧さんの記事が充実しているので関連リンクをば。こちらにも関連した内容が有ります。

二十歳の頃に知っておきたかったこと 2007 - Innovation, Creativity and Entrepreneurship

運を自ら引き寄せるattitudeとは -"What I Wish I Knew When I Was 20"- - Innovation, Creativity and Entrepreneurship


2010年1月3日日曜日

[書評0105④]市場・知識・自由[竹内]

ハイエクは、「われわれが合理的な経済秩序を建設しようと努めるときに、解決したいと思う問題は何であるのか」と問い、当時近代経済学の内部においても主張されていた一般均衡論が描くような集中的なよく組織された市場はなく、問題は「われわれが利用しなければならない諸事情の知識が、集中された、あるいは統合された形態においては決して存在せず、ただ、すべての別々の個人が所有する不完全でしばしば互に矛盾する知識の、分散された諸断片としてだけ存 在するという事実」にあるのだと指摘する。

社会の経済問題は、社会主義における経済計算のような「与えられた」資源をいかに配分するかという問題だけではなく、「社会のどの成員に対しても、 それぞれの個人だけがその相対的重要性を知っている諸目的のために、かれらに知られている資源の最良の利用をいかにして確保すべきかという問題である。どの人にもその全体性においては与えられていない知識を、どのように利用するかの問題」となる。情報は基本的には非対称的であり、その中で、情報の価値をどのように最大し社会にとっての最適解を見つけていくかが問題なのである。

つまり「個々の参与者たちが正しい行動をとることができるために知る必要のあること」を最も少なくすることができる機構だとして、市場システムを全面的に肯定している。

ハイエクは、様々な場所、時間、形態で様々な立場の人間が持っている、そしてそのことによって社会的生産が実に効率的に行われているような「知識」 が、特定の個人や当局による設計主義的な社会建設、経済建設の方法では決して有効に活用できないのだ。柔軟に変動する緩やかな制約が求められている。


市場設計において、政府の政府の干渉のバランス感覚が非常に重要だと改めて感じた。情報は野放しな状態ではスムーズに流れにくく、最低限の制度による制約は求められる。その制約も時代によって移り変わるため柔軟さが必要になると感じた。


[書評0105③]人間機械論[竹内]

サイバネティックスとは、メッセージの考える際に、機械や社会を制御する通報や心理学など広い範囲でとらえた言葉である。通信基幹が発達したいま、人間から機械、機械から人間の間における通報がますます大きな役割になってきている。
コミュニケーション、通報は基本的に外部との情報の交換によって生まれる。コミュニケーションは外界に影響を及ぼすと同時に、自己にも影響を及ぼす。その ため、逐次自己を調整していかなければ、自己のエントロピーは増大していく。エントロピーとは、何もしない状態ではカオスに向かうことである。これに反す る行為を反エントロピー行為と呼ぶ。例えば、死に向かう人間が何らかの治療等を施し、死からのがれようとする行為がこれにあたる。
反エントロピー行為は必要なものである。これがなければ、カオスに陥り、コミュニケーションが制御不可能になるからだ。反エントロピー行為に必要なもの は、フィードバックだ。フィードバックは情報の出力をまた入力に還元するメカニズムを指す。随時、自己のアウトプットを監視し、自己を調節していくことが 求められる。


サイバネティクスの概念がいまいち理解できなかった。難しい用語が多くでてきているが、もう少しわかりやすい言い回しがあるように思えた。他の文献を読むなどして理解を深めていきたい。
コミュニケーションが容易になったことにより、コミュニケーションの機会が増え、ほうっておくとカオスに向かうスピードが上がるというのは納得出来た。これから、ますます機械とコミュニケーションが重要性を増してくると思う。機械と人間はそれぞれ良いところが異なるので、互いに補完もしくは監視していくことが良いのではないだろうか。機械と人間がそれぞれのフィードバックを監視し合うべきだろう。その中で、フィードバックを迅速に解析し、自己調整へスムーズにつなげる仕組みが求められると感じた。