2010年1月3日日曜日

【ホンヨミ!0105④】決めぜりふ【大賀】

斉藤孝著「決めぜりふ」(2009年、世界文化社)2009年1月2日読了

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 「声に出したい日本語」でお馴染みの斉藤孝氏の新作ということで、何となく手に取ったのだが、題名を見てびっくり。私の大好きな「幕末維新」の名言集であるというのだから!これは買わずにはいられまい、と、即座にレジに走って購入。すぐに熟読した。

 斉藤氏は、「私は歴史家でもなければ小説家でもない」と最初に述べ、あくまでも本書は「過去の人物たちの何が現代へとつながっているのかという『切り口』を考察するものだ」としている。とは言っても、歴史をまったく知らない人が書いた単なる流行モノに留まっていないのが本書の素晴らしいところだ。各人物の名言には必ず、その人物がどのような人であったのか、どのような境遇に置かれていたのかという説明文が添えられている。また、各章の間には「短時間でわかる幕末維新データファイル」が掲載されているため、歴史の知識が危うい人にとっては安心の設計だ。歴史好きな人はもちろんのこと、歴史に詳しくない人であっても十分楽しめる良書である。
 本書で紹介されている人物は全部で40人近く。新政府側から旧幕府側まで、どちらか一方に偏ることなく多種多様な人物の言葉が掲載されている。ただ「この言葉が格好良い」というだけではなく、現代の人々(とりわけ若者たち)への教訓が添えられている。将来に悩みながらも、未だ一歩も踏み出せていない私にとっては耳の痛い言葉ばかりだ。もっと頑張らなければ…と痛感した。個人的に心に残ったのは、大鳥圭介の言葉。「今度はいちばん降参としゃれてみてはどうか」‐オール・オア・ナッシングが当たり前の「武士道」の世の中で、「駄目だったから死ぬのではなく、生きてみて、できることをやってみよう」とする粘り強い精神を示す言葉だ。私は正直、彼のような生き方は狡賢いと思い嫌っていた。しかしよくよく考えてみれば、大鳥の生き方には学ぶべきところが多いような気がする。生か死か、成功か失敗か、という考えは、視野が狭い。失敗してもまた次に頑張れば良い、何も死ぬことはない。‐確かに、その通りだ。

 …とはいっても私のあこがれる精神は一本気な「武士道」‐それは変わらない。その過去の精神を持ちつつ、近代まで生きた人々の生き方に学ぶという柔軟な姿勢を持ちたいと思う。

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