若者のための政治マニュアル/山口二郎
現在の生きづらい社会を変えるために必要なのは民主主義である(しかしその民主主義自体の在り方自体を今一度考えなおさなければならない)という主張のもと、その民主主義を実現させる政治の在り方について書かれた本である。単なる机上の政治論ではなく、政治と自分の行動に関連性を見出せない私たちの若者世代に向けた、基礎思考力をつけるための10個の考え方が示されている。
特に私の印象に残ったのは、「権利の主張」に対する考え方である。公共の利益を尊重するためには、私人の利益を過度に主張しすぎてはならないと考えられがちであるが、公共の利益とは私人の利益の主張の最大公約数であると筆者は考えている。権利の主張と特権の主張は混同してはならない。後者はいわゆるモンスターペアレントやクレーマーなどといった、自分の行動を他者の立場に立って考えることのできない人々による理不尽な主張であって、これをもって現代の人々は権利を主張しすぎると言ってはならないと筆者は述べている。これ以外の、自分以外の誰かも望むでろう権利は、決して主張しすぎということは決してなく、むしろ主張する人がいなければ「最大公約数」という考え方も生まれなく、それでは私人の利益と公共の利益に乖離が生じてしまう。「公共」そして「私」は表裏一体でなければならないのだ。その私人の権利を受け入れ、集約していくのが政治の役割であり、民主主義を持って、私たちはその活動に関わっていかなければならないが、その実感が見いだせていない現状が問題なのだ。少しでも国や自治体で行われることに対して実感を持つために、本書のような「思考への誘い」は有意義だと思う。
2010年1月3日日曜日
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