2009年12月14日月曜日

【ホンヨミ!1211③】ローマ人の物語 パクス・ロマーナ中 15【田島】

ローマ人の物語 パクス・ロマーナ中 15 塩野七生著

塩野氏のライフワークともいえるこのローマ人の物語シリーズだが、この巻は「パクス・ロマーナ」(ローマの平和)の中期を扱っている。ローマの平和と繁栄がどのように築かれたかという、実に興味深い内容を描いている。古代ローマの時代から2000年以上がたち、技術は大きく進歩したが、人間はかつてローマが手にしたほどの広大な土地を誇る国を維持することはできなかった。戦争と価値観の相違によって、国はどんどんと細分化された。

ローマが平和と繁栄を維持できた理由は、皇帝アウグストゥスの能力と、ローマ人のたちの価値観によるものが大きいと感じる。
アウグストゥスは、リーダーシップの民主主義のバランスを知っていた。民意を汲んでいることを示しつつ、さりげなく統治の主導権は掌握して国の方向性をよい方に向けていく。カエサルほどのカリスマ性はなかったが、だからこそアウグストゥスは我々にとって非常に参考になるリーダーである。
ローマ人の合理的な思考方法も非常に参考にすべきものがある。一度ケルト民族に国をめちゃくちゃにされたローマ人は「それがなぜか」を徹底的に考え、いかしていった。ローマ人の「寛容」の精神も、国を広くするために、「自分を認め、相手の多様性を認める」という姿勢を獲得した結果である。パクス・ロマーナ期のローマは、非常にクリエティブな環境であったのではないか。組織の構成員がどうあれば国が繁栄していくか、ローマ人の姿は教えてくれる。

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