2009年11月5日木曜日

【書評】デザインの輪郭【栫井】

デザインの輪郭/深澤直人

「デザイン」というと、派手で目立つもの、人と違う個性を強調するものを連想しがちだ。しかし、この本の中に登場する物ものは、鮮烈に目に入ってくるものというよりも、すっと日常の中に溶け込んでくるものだ。

幸せの現象、という項目が本書にはあるが、些細な日常の中でふと感じることの大切さ、そこに当たり前に存在しているものの価値を著者は語っている。
デザインを、作り込まれた人為的なものというよりも、偶然に生まれたもの、むしろ必然にそうなったものと捉えているように感じた。必然というのは、その環境に適合した形になるということだ。その環境に張り巡らされた見えない力の関係性にかなっているということだ。人が生きる上で必ず触れている力関係を自覚して、そこに何かを乗せていく。

本書を読んでいると、ふっと肩の力が抜けるというか、変に力むところのないありのままの造詣の価値に気づかされる感覚がする。なんだか枯山水を思わせるような文脈がそこにあるようで、落ち着いた綺麗な気持ちで読み終えた。

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