2009年10月13日火曜日

【ホンヨミ!】1Q84(book1)(book2)【田島】

(先週の分の書評です。遅くなってすみません)
1Q84  book1 book2 村上春樹

話題の本ということと、授業の課題だったので読んでみた。村上春樹作品は「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」以来二作目。村上作品の印象は「面白いけど別に好きな作風ではない」。文章・テーマなど他の作者を逸した独特の雰囲気があり注目されるにふさわしいと思うが、私の好みかというとそういうわけではない。今作を読んだ感想も同じだった。
しかしただ小説の感想を書いても仕方ないので、その授業でも論じられた、この小説の学術的に着目すべき点について書こうと思う。ひとつは、村上春樹が「1Q84」を通じて1984年前後のまだ小説化・学術化されていない時代の再構成をこころみていることだ。このような時間を経ての歴史の再構成は小熊英二「1968」でも試みられているらしい。そちらも読んでみたいと思う。「1Q84」では実在した宗教団体を連想させるような、新興宗教が描かれている。80、90年代に浮上した、政治と新興宗教などの問題に村上春樹は独自の視点で挑もうとしている。
また、この本の中で「空気さなぎ」というアマチュアの高校生が書いた未熟な小説を、小説家である主人公が編集者と組んでリメイクし、ベストセラーを生むという展開があるが、ベストセラー作家が「ベストセラーを生み出す手法」を書いていて面白い。メディアを通じて出版物の「ブランド化」はいかに行なわれるか、この本をもとに考察してみるのも面白いかもしれない。
この本は続編の刊行が決定しており、内容も、そしてその社会的ブームのゆくえも大いに気になるところである。

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