2009年10月11日日曜日

書評 「クラウド・ビジネス」入門 林雅之著

論文チーム獺の輪読書。クラウドコンピューティングとは、PC側(ローカル)で処理を行うのではなく、ネットの「向こう側」にある巨大なコンピュータ上で処理を行うシステムのことだ、と著者は言う。これが普及することで、企業内でIT資源を構築する従来型のシステムに比べて、劇的なコスト削減をもたらすことが可能となり、その分、資金や人員をコアコンピタンス(自社の核となる強み)の領域に集中する事ができる。つまり、事業の「選択と集中」という意味で経営資源をより中核的事業に集中することができるようになる。これが本書で述べられている事の骨子であるように思える。

著者によると、クラウドコンピューティングには具体的には7つのメリットがあり、それらは「ユーザーにとってのメリット」・「開発者、提供者側のメリット」・「経営側のメリット」の3つに分けられるという。

ユーザーのメリット:
①システムの導入費用及び運用費用が削減できる
②必要な時に必要な分だけ、最新の高機能なサービスを利用できる。
③いつでもどこからでもグローバルな規模で業務が遂行でき、コラボレーションができる
開発者、提供者側のメリット:
④クラウド基盤上の開発環境や運用環境を利用し、アプリケーションを開発/運用できる
⑤企業規模に関わらずクラウド基盤を利用して、大規模なサービスが提供できる
経営側のメリット:
⑥クラウドサービスを柔軟に活用しながら企業経営ができる(固定費を削減し、生産性を向上させる)
⑦システムの運用保守などの専門担当者がふようになり、または削減でき、コアコンピタンスに集中できる

これらのメリットに関する具体的事例として、例えば、特殊ネジの専門商社ツルガがSalesforceのCRMプラットフォームを利用することで業務の可視化に成功した例や、日本大学がGoogle Appsを導入することでメールシステム構築のコストを劇的に削減した例、あるいは東急ハンズがクラウドを利用した、社員のスケジュール管理を行っている例などが紹介されている。

これらのことから感じるのは、クラウドの普及によってIT活用における企業規模による格差はなくなりつつあり、いかに情報システムを自社経営に「利用」するかというIdeaこそが競争優位に立つ上で重要になってきているという事だ。そのような中で、魅力的なコンテンツ/システムを創り出す創造性こそが市場における競争力の源泉となっていくのだと思う。

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