本書はクラウドコンピューティングの仕組みや、その運用のされ方まで、よく網羅されている。特に目新しい事項はあまりないのだが、ある程度知識を掘り下げていくという意味では価値ある一冊だろう。
クラウドという概念が登場する前まで、ユーティリティコンピューティングやグリッドコンピューティングなど、クラウドにかなり近いものはすでに存在していた。それらの境界線は非常に曖昧で、今もなおはっきりと違いを説明している書籍はほとんどないが、本書では、これらの技術とクラウドでは一体何が違うのか、わかりやすい要素に分解し説明されている。そこでキーワードとなっているのは、分散と集中、そして利便性である。例えばグリッドコンピューティングは、分散したリソースを用いるのに対し、クラウドはベンダーによって集中管理されている。歴史的に見て、コンピューターシステムの世界は分散と集中を繰り返してきたというのは自明であり、本書でも触れられていた。そのような中、このクラウドは「集中」へと向かっているのである。さらに、以前獺(かわうそ)班のプレゼンで勝部君が言っていたように、クラウドの本質の一つとして言えるのは、「規模の経済性」である。前述のベンダーによる集中管理というクラウドの性質に加え、この規模の経済性は、データセンターの集約化を促進している。なぜなら、データセンターがデカくなればなるほど、コストが下がり利益率も上がるからだ。
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