2009年10月22日木曜日

【ホンヨミ!】小さな家【斉藤】

 小さな家 ル・コルビュジュエ

 建築家のル・コルビュジュエが、隠居後の両親のために立てたスイスのレマン地方の湖畔の家についての設計からエピソードに至るさまざまな説明が記載されている本だ。たくさんのデッサンと少ない文字で100ページ足らずであるが、建築に限らず物事の本質を突くような言葉が並べられている。

 特に私の印象に残ったのは、窓の設計についての記述だ。ル・コルビュジュエ氏は、建築の中で最も難しい部分は窓だと言っている。なぜならば、窓をつくることは限りなく広がる風景を任意に切り取るという行為だからだ。住居人はその切り取られた風景をその家が存在する限り一生目にし続けるわけである。たとえどんなに壮大な美しい山の風景でも、起床から就寝まで見続けることになったとしたら、威圧的で見苦しいものになったりはしないだろうか。窓から見える景色は、日常生活の中で常に付き合っていかなければならない景色である。そう考えると、どの建築家もきっと熟考に熟考を重ねた上で、どこに窓をつけるか、を決定するのだろうか、と当たり前であるけれど不思議な気分である。考えたこともなかったことなので、目から鱗だ。

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