2009年10月15日木曜日

【ホンヨミ!】変われる国・日本へ【大賀】

坂村健著「変われる国・日本へ-イノベート・ニッポン」(2007年、アスキー新書)
2009年10月15日読了

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 別に知ったかぶりをしていたわけではないのだが。どうやら私は、「理解した気になっていた」らしい。私の悪い癖だ。よくわからないくせにわかったような顔をして振舞うから、気がつけば他者のみならず自分自身もそれに欺かれてしまっている。‐正直に言おう。私は本書を読み、ようやく「イノベーション」の意味を理解した。
 私はイノベーションの意味を、「新しい技術の開発」と理解するのみで終わってしまっていた。しかし本書には、それだけではないと記されている。「従来のモノ、仕組みに対して、全く新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を生み出し、社会的に大きな変化を起こすこと」‐これが本来のイノベーションの意だ。つまり、未来の社会に何らかの価値を見出す技術を創り出すことだ。イノベーションの試みには多大なリスクが付きまとう。米国のように、「とりあえずやってみよう!」というアイデアベースの風潮が強ければいいが、日本にはまだその傾向は弱い。寧ろ、「失敗したらどうしよう・・・」「目標を定めなければ・・・」などと言って踏みとどまってしまっている。しかしそれではいつまでたっても動くことはできない。石橋をたたいて渡る精神が必ずしも悪いというわけではないが、「たたいている間に他の人に抜かれてしまう」ことや、「たたきすぎて石橋が壊れてしまった」という事態になってはいけないだろう。
 筆者は本書のあとがき部分に、「政府は直接イノベーションを仕切るのではなく、イノベーションが盛んに生まれるような環境整備だけを行い、あとは天に任せるという市政が重要になる」と見解を述べ、「特定の方向性やイメージに固定化しないこと」としている。この考えは日本社会にとっては非常に斬新なものだろう。また本書のユニークな点は、「イノベーション」関係の本によくありがちな、「アメリカの手法を学べ!」という考えにのっとっていないことだ。日本には日本のやり方がある。日本の良さを、日本なりに出していけばいい。

 読んでみると、少しだけ明るい未来を持てるようになる。良書だった。

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