2009年10月22日木曜日

【ホンヨミ!】テッラ・マードレ母なる大地【斉藤】

 テッラ・マードレ母なる大地 エルマンノ・オルミ

 御存じの方はあまりいないと思いますが、今週はイタリア語週間です。これは世界的なもので、イタリア語学習者のためのイベントが世界各地にあるイタリア文化会館で行われます。東京は九段下にありニューヨークの次に規模の大きいものだそうです。イベントとしては講演、映画の上映、留学説明、イタリア語教育についての議論などがあります。また今週の土曜には東京の大学が集い、イタリア語学習者によるちょっとしたパフォーマンスを発表し合います。慶應は「カラオケ」をやります。イタリアの有名な歌を2曲歌います。私もイタリア語を履修しているので土曜日はパフォーマンスに参加してきます。
 本ではないのですが、水曜日にこれらのイベントの一環として上映されたドキュメンタリー映画「テッラ・マードレ母なる大地」を見に行ったので、そのドキュメンタリーについての感想とさせていただきます。まずテッラ・マードレとは、「良質な食品の生産者と、優れた味覚を持ち人間を尊重する品質を求める人々をつなぐことを世界食生産者コミュニティ会議」のこと。イタリアではトリノで隔年、スローフード活動として世界各国から食物関係者や学生、有識者などが集まって議論やワークショップを通じて食についての課題を考える。日本ではスローフードの初の試みが今年横浜で「スローフード・ジャパン」として行われる。このテッラ・マードレの代表であるスローフードインターナショナルの会長のカルロ・ペトリ―二氏とエルマンノ・オルミ監督の共賛でこのドキュメンタリーは作られた。監督は2008年にトリノで行われたテッラ・マードレの様子をドキュメンタリー風に撮る。世界の食糧不均衡を訴える開発途上国の女性、出稼ぎ途中で息絶えた息子の無念さを語る母親、校庭を菜園にすることに成功したアメリカの高校生。さまざまな人が壇上でスピーチをする姿は、世界の食の問題について強く訴えかけるものだったが、私はむしろ後半の無声映像に強く感銘を受けた。カメラは、ごく普通の老人が営む農業の様子を朝から夜まで、春から冬までをただ単に移す。種が撒かれ、土がかき回され、そして食物は成長し、食される。ただそのサイクルであるが、映像を見て土の「生」を感じた。気がつけば最近土に触れていない。先日国文学の講義にもあったが、土は有機物である。安価・効率を重視した農業では、化学肥料の使用により有機物が死滅してしまうということを忘れてはならない。
 スローフードについて考えることは、同時に自然の営みについて再度認識することができるので、また普段の生活では決して認識することができないので、たまには「効率」という言葉から離れてみるのもいいことではないかと思う。

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