2009年10月14日水曜日

書評 ハゲタカ 真山人著

メーカー勤務の社会人の方に薦められて連休中に買った本。小説を読んだのは久しぶりだったのだが、これは大正解だった。

この小説は2006年初版だから小泉構造改革全盛期に書かれた。僕は当時、規制緩和の波乗った「黒船来航」の空気を、高校生ながらに感じていたことを覚えている。就職ランキングのトップが、財務省からゴールドマンサックスに移り、外資による不良債権処理やTOBが相次いだ。今の評価がどうあれ、当時は、こうしたダイナミクスに魅了され、日本中が酔いしれていたことを思い出す。

この小説の舞台はさらに遡り、僕の生まれた1989年からスタートする。バブルの時代。日本国土の地価と何十倍も広いアメリカ国土の地価は、同じなどという資産を出した人がいるほど、それはすさまじいものだった。そして、そのツケは「失われた十年」という形で日本に圧し掛かる。「失われた十年」の中で迷走する日本の銀行や企業の資産をハゲタカが安く買い叩き、一瞬にして高く転売する展開が、読んでいて興奮を煽る一方、少し心苦しかった。あくまでも小説なのでここまで酷いのはないだろうが。

「失われた十年」が1990年代ならば、2000年代は何だったのだろうか。あと2ヶ月足らずで2010年を迎えようとしている。ここで猛威を振るったアメリカのハタゲカたちは、今やサブプライム、リーマンショックで大打撃を受け、すっかり勢いをなくした。今、脚光を浴びているのは中国や中東を筆頭とする国富ファンド、オイルマネーファンドだがこれもいつまで続くことやら。マーケットというものは全く気まぐれだ。

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