2009年10月23日金曜日

【ホンヨミ!】ITにお金を使うのは、もうおやめなさい【菊池】

 『クラウド化する世界』の著者、ニコラス・G・カー氏の2005年の著書。4年前にもかかわらず、クラウド化が進む中で生じている現象をあらかじめ予想していたような内容もあった。もちろん、本書にはクラウドという言葉は一言もないのだが。現在、クラウドコンピューティングの進展により、多くの企業は無駄な投資を回避する手段を得ている。自前のサーバーを構築することは必要条件ではなくなり、必要な分だけを借りてくれば良い。ハードに限らずソフトも、より低コストなあちら側からのサービスとなり、従来のソフト販売のビジネスモデルから脱却しつつある。

ITへの投資が大幅に減る現象を、本書の著者は「ITのインフラ化」という視点から述べている。ITのインフラ化とは、今までは差別化要因と見られていたITへの投資が進み、誰もがそのような戦略をとるようになるにつれ、IT技術がコモディティ化してしまうことだと言える。

しかしコモディティ化とは、誰もがそれなりに満足できる水準を持つことでもある。水道というインフラに誰もが満足しているように。この誰もが満足している中でひたすら技術開発を続けても、技術の供給過剰(オーバーシューティング)が進み、その分の上乗せコストを嫌いほとんど使われなくなる恐れがある。現在、ネットブックのような、必ずしもハイスペックではないパソコンが、その安さから人気を集めているが、これもこのオーバーシューティングの結果であると言える。

クラウドとはこのITのインフラ化・コモディティ化の延長に存在する破壊的イノベーションなのだと思う。インフラとなっていたITは、クラウドによってさらに低コストで使用できる道が拓かれたのだ。

最後に、本書を通して、インフラ化から破壊的イノベーションの流れという思考のフレームワークを得られた気がする。このパラダイムシフトが起きるタイミングを、これからじっくり観察してみたいと思った。いつかはクラウドもコモディティ化が待っているのだろう。

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