2009年10月12日月曜日

【ホンヨミ!】食のクオリア【金光】

『食のクオリア』 茂木健一郎

「食」は私の生活の大きな楽しみを占める行動です。題名を見て思わず手にとってしまいました。

この本を読んで、食のことよりもむしろ筆者の文章の書き方、分析の仕方が心に残りました。
具体的には二つあります。一つめは、「私たちは同じものを食べても、相手が同じように味を感じているか確認できない」というもの。二つめは、社会で生きていくときはお互いが相手のことや行動を信頼して生きているという「信頼の原則」。なぜこの二つかというと、両方とも私が20年間生きてきて不思議に思ったこと、発見したことと同じだったからです。
相手が同じように感じているかわからないという問題は、幼稚園に入る前の記憶です。「足がシビレタ」という母の言葉を聞き、シビレタというのがどういうものなのか分からず、でも母の足と私の足を交換するすべもなく、結局しばらく経ってから――どうやら正座した後の感覚をシビレタというらしいとなんとなく理解しました。
信頼の原則は、中学生のときに車に乗っていて。その時自分が発見した原則は「予想の原則」でした。信号が赤のときは車は走り出さないことを見て、世の中の人はみんな見知らぬ人の行動を、予想してそれに無条件に安心して行動しているんだなぁとぼんやり考えました。だから予想が外れて相手が赤信号なのに渡ったりすると事故が起きるし、100m競走は全員が予想通り100mを全力で走るから競技が成立するのです。その時は予想→信頼まで絞りこむことができませんでしたが、いろいろ連想しているうちにすべてのものにあてはまることに気付いて、なんだか大発見でもした気分になったのを覚えています。

筆者は本文で、味を文字で表すのはとても難しいと書いていました。しかし、文字では表わしにくい概念や感覚、現象を、専門家以外にもわかりやすく書くのが得意なのがまさしく茂木さんだなと思いました。そして、私はこの本で自分がぼんやり考えたことがあることを二つも見つけました。言われると当たり前のこと、原則や決まりでも、人に言われるのと自分で考えて思いついたことはインパクトや印象の残り方が全く違ってきます。私でも二つもこの本の中にあったということは、筆者の著作はきっと多くの読者の共感を呼ぶ分析、内容なんだと思います。そして私はこの本でこの二か所を見た時に自分が正当化されたような気がして嬉しかったです。著名な筆者と同じだった!と自信が出ました。


今、本の表紙を見ていて、食という漢字には「良」が含まれていることに気付きました。良いものをよく食べることは良いことです。

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