2009年9月16日水曜日

[書評]日本のポップパワー

本書にもあるとおり、日本は、世界的に見ても放送、コンテンツなどの分野においてかなりの表現の自由が認められている。つまり世界的な視野から見れば、コ ンテンツ市場内の競合は少なく、キラーコンテンツが出やすい環境と言える。つまり、流通の制度と表現の質が底上げされれば、日本のコンテンツはより強い競争力を持つことになるのではないか。一方で、日本のコンテンツをモラルの面から見た時、状況は変わってくる。日本のコンテンツは規制が緩いために暴力シー ンなど悪質なものも多くある。世界の中で批判が多いのも事実だ。日本のソフトパワーの強化をとるかモラルを取るかという課題は今後も 議論されていくところだろう。個人的には、ソフトパワーの最大化に取り組んでもらいたい。実際、日本は治安のよい事で知られ、アニメが直接的な原因となって生じる犯罪はあまり多くないからだ。現実世界とアニメの中の世界の区別がつく子供の方が圧倒的に多いだろう。

また、日本のコンテンツにおける流通制度や表現の質は、まだまだ発展途上だと言える。しかし、それらが今後育っていく素地は整いつつあると思う。例えば、 コミックマーケットは表現の質や流通手段を見直すよい機会ではないだろうか。僕はコミケを現実世界版Youtubeだと思っている。コミケはその双方向性がゆえにインターネットの構造に似ている。 そのため、消費者の意見がクリエイターに届きやすい。これは、コンテンツクリエイターの育成という意味でも優れている。また、現在よく見られる多くのクリエイターを少数の中間業者(出版社など)が独占するという構造は相対的にクリエイターの立場を弱めることにつながり、新たな作品を生み出すインセンティブが減ってしまう。日本のソフトパワーを最大化するには、前述したような表現規制の強化よりもコンテンツ市場の構造改善の方が必要なのだろう。コミケやYoutubeのような消費者とクリエイターが直接的に取引可能なプラットフォームが増えれば、コンテンツ市場の改善やクリエイターへのインセンティブ強化につながるのではないだろうか。

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