2009年7月8日水曜日

【ホンヨミ!】人間の関係【大賀】

五木寛之著「人間の関係」(2007年、ポプラ社)
2009年7月6日読了

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 母から勧められて読んだ本。今年で77歳になる小説家が、人と人との関係性を中心に人生を論じるというものだ。母曰く、「若い世代にはちょっと早いかもしれない。」とのことだったが、著者の視線は老成し過ぎていて確かに少々難しい感じがした。だが、本書に記されているひとつひとつの教えには「重み」があった。壁にぶつかり苦しい気分に陥っている人々にとっての道しるべとなる本だと思う。
 とりわけ印象に残った教えは、筆者自身が行った「一言日記」をつけるというものだ。筆者は今までの人生において3回の鬱状態を経験した。そこから脱却するために、筆者は、はじめのうちは「嬉しかったこと」を記した。そして次には「悲しかったこと」を、最後の鬱状態から脱却するときには、「ありがたかったこと」記す日記を毎日つけた。そうすることで、自分自身を見つめなおすとともに、生きることの素晴らしさを感じることができたのだという。私自身、この筆者の経験には思うところがある。高校2年から3年にかけての1年間、私は毎日ノートに日記をつけていた。きっかけは先生の一言だった。先生は、受験期のストレスのせいで何かと浮かない顔をしていた私に対し言った。「大賀さん、日記をつけてみなさい。そうすれば毎日必ず自分自身と向き合うことができる。きっと心に余裕が生まれるよ。」その言葉を受けて半信半疑で日記をつけはじめた。どんなにくだらないことでも書いた。今日のお弁当は美味しかったとか、机に足をぶつけて痛いとか。日記を書いていた当時はその効果を感じたことはなかったが、今になって思えば「日記を書く」という行為によって私は受験期を乗り越えることができたのかもしれない。毎日一回、出来事を振り返って、自分自身を見直し、そしてまた自分と関わりのある人々の存在を再認識することで、「生きていること」を感じ、そのことに対して歓びを見出すことができていたのだ。
 今、私は、何かと余裕の無い生活を送っていると思う。今からでも遅くは無いとするならば、もう一度日記を書き始めようか。

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