2009年7月10日金曜日

【ホンヨミ】密約【菊池】

『密約』澤地久枝著

本書は、沖縄返還協定において日本とアメリカの間で交わされた密約が、外務省事務官によって新聞記者に漏えいされた事件が舞台となっているルポルタージュ。高校生の時、新版が出たのをきっかけに購入。当時は、国の裏の情報というものに触れてみたいという純粋な感想を持った記憶がある。今回は、とある授業で記者についての内容を扱ったのをきっかけに一時的に興味がわき、再び読むことにした。

 本書は、記者という仕事に焦点を当てている。自分の中での記者のイメージは、本書による影響が大きい。それは相当のリスクを負っている仕事だということだ。そのリスクとは記者についての二つの問題点に由来する。一つ目は、記者の情報入手の手法の問題、二つ目は取材源が明らかになってしまうことの問題だ。まず一点目の問題点だが、本書では、新聞記者が、男女関係を通じて女性外交事務官から機密情報漏洩を唆し問題となった。これは結果として唆しがバレてしまったことで犯罪も成立することとなった。個人的には手法としてはあっても良いと思う。そこまでしないとありつけない、様々な問題もあるからだ。ただし、その「行為」が明らかになってしまえば元も子もない。それにより情報源も特定され、情報提供者一般を委縮させてしまう二つ目の問題にもつながる。

 このように、記者は二つの大きなリスクを抱える仕事なのだと思う。しかし、このリスクを忘れると身を滅ぼすことになる。仮に、自分が特ダネに飢えている記者になったら、うまくリスクヘッジという謙遜さを持てるのだろうか。

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