2009年7月31日金曜日

【ホンヨミ!】読む人間【池亀】

『読む人間』/大江健三郎

図書館で偶然目にし、タイトルにインパクトがあったので読んでみた。本書では、大江健三郎にとって読書はどのような影響をもたらしたか、とくに小説家としての職業にどのような影響があったかということが述べられている。人生の半分を読書が占めると言う著者は、自身と本との関係を、自分という人間に血管でまさに直接つながっている感じと表現している。すごい例えだが著者にとってまさにそのような感じなのだろう。また、読書については、人間は本を読むことでそれを書いている人の精神がどのように働いているのかを知ると同時に、いまの本当の自分に出会うチャンスをえることができるとしている。たしかに本を読む時、その内容を理解する過程で必ず自身と向き合っているように私も感じる。逆に本を読んでいない時というのは、自分がふわふわと地に足がついてないような、自分を見失いそうな感覚が生じる。最近それを思い知ったところである。さらに、本書で著者は、古典を読むこと、とくに若い時期にそうしたものを読むことの重要性を繰り返し説いている。大切な本だと聞いて読んだが、これは人生に役に立たないと思う本でも、永い歳月がたって、それが光りを帯びることがあるそうで、そうした意味で将来古典が与えてくれる豊かな経験を思い、若い頃のうち古典を読みその準備をしていくのはよいことだろうとしている。著者が言うとやはり非常に説得力があるものだ。この本に出会ったのもなにかの縁だろう、本書の中で著者はこれまでの人生の上で重要だとする本をいくつか紹介しているので、この夏読んでみようと思う。

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