2009年7月11日土曜日

【ホンヨミ!】脳と創造性【岸本】

 ロジック一辺倒から距離を置くことが出来ることを「創造的」とし、コンピュータとは異なり、私たちは皆「創造的」であるとする筆者の意見には賛同できる。更に、ダニエル・ピンクなど様々な専門家が論じているように、これからは機械や途上国にどんどん単純労働が流れていくので、わたしたちは「創造的」な仕事を要請されるようになるという議論がこの本にも通じている。

 一番気にかかったのは文脈に関しての記述の部分。ベンヤミンのアウラ論を彷彿とさせるクオリアの話はそれなりに共感する箇所もある。(とはいえ、去年目の前でダヴィンチの「受胎告知」を見た時はこんなもんか。って感じだったが・苦笑)文脈は確かに流通や批評に適している。一種の「タグ付け」とも言えるだろう。その一方で文脈は創造性を促進する。モーツァルトは他の作曲家の曲を筆写しまくっていたし、デュシャンは一通り当時の美術の流れを通過している。(ここら辺は東大院の岡田猛先生の研究が興味深い)こうして多くの芸術家たちは既存の文脈を忠実になぞった上で新たなものを生み出してきた。文脈をなぞることは受容されることにおいて必要な条件ともなりうる。現在情報過多の時代において「タグ付け」を行うことによりいくらでも文脈が複線化するようになった。脱文脈化とそれに伴う文脈の複線化により今まで以上に創造的になったと言えるのではないか。とはいえ、文脈一辺倒でもダメであって、やはり両方を兼ね備えることが重要であるというのが私見である。

 どうも全体的に定義が宙ぶらりんな言葉が多く、まさしく全体的に把握することで精一杯であった。

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