2009年7月21日火曜日

【書評】安心社会から信頼社会へ【勝部】

広告特殊講義のレポート課題図書。書評にすべきか迷ったが、せっかくなので書くことにした。

僕は、今まで「安心」と「信頼」」の違いについて考えたことは無かった。しかし、この二つの言葉は「同質」ではあるが、「同義語」ではない。むしろ、真逆だ。「安心」は社会の前提になるような暗黙の掟であり、時に懲罰をも伴う。一方「信頼」はゼロの状態から作り上げることによって成立する。信頼するのもしないのも、当人の自由意志にゆだねられている。この点が、この二つの大きな違いだ。

「安心社会」から「信頼社会」へのシフトが、日米との比較も含めて、緻密な社会学的統計を用いて展開されている。統計の方法論に関しては興味が無いのでほとんど読み飛ばしてしまったが、まさに常識とは反対のデータが提示されていた。いかに常識と現実がかけ離れているか、あるいはイドラの影響力を改めて感じた。

個人的なことを言えば、日ごろから人を信頼できているだろうかと思った。また、本書では言及されていなかったが、「信頼 Trust」と「信用 Credit」の違いについても考えた。この答えはかなり個人差が出ると思うが、誤解を恐れずに言うと、私は片務的であるのに対して後者は双務的であるように思う。つまり、「信頼する」ということは見返りや保障を求めずに信じること、「信用する」ということは何かそれを担保するものがあって信じること。一言で言えば取るリスクの違いだ。もちろん、信頼の方がリスクがでかい。

リスクをとらなければ、信頼することはできない。逆に言えば、信頼されるということは、コミュニケーションの相手にリスクを取らせると言うことだ。この関係性を見ていくと、やはり信頼も双務的、いや、相互作用的なのかなと思った。つまり、信頼されるということは信頼すると言うこと、逆も然り。だから人を信頼できるということは、自分も信頼される人間であると言うことではないだろうか。それをこの本書の理論で解き明かすと、「信頼の好循環」のようなものが見出せる。それは一向に良いことだ。

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