TOKYOの建築50の謎 鈴木伸子
東京のさまざまな街の景観や、建築物を中心としたまちづくりに興味があったので読んでみた。本書では東京で見られる特出した特徴のある建物や施設についての謎50について迫るという内容だが、あまり迫っているとは言えなかった。単に状況説明に終わっていて、そこからの考察があまり深くなかったため、読み応えがあったとは言えないが、普段見ている建物や施設について、現状を的確に表したり意味付けがしてあるので、違った視点から東京の建物を見ることができる。合わせて東京のさまざまな建物や施設の設計をした隈研吾氏による対談形式の「新・都市論TOKYO」も読むつもりなので、そちらにはより深い考察があることを期待する。
最近流行りのちょっとした贅沢、プレミアム思考が建築にも表れていると思った。特に「和」は現在高級感を出すための付加価値として重視されているように思う。敷居が高く入るのに躊躇してしまうような和風料亭や和菓子屋、これは「和」の伝統的なプレミアムであるが、注目すべきなのは最近の複合商業施設である。例えば生活商業複合施設である東京ミッドタウンは、建物外面に高格子状の装飾が施されているが、あれは京都の町屋をイメージして建築されたものだそうだ。しかもデザインしたのは外国人。このように外国人による「和」趣味の建築が最近増えているが、このような建築を見て日本人自身が改めて「和」の美を発見するという逆説的な存在になっているそうだ。大型ビルのテナントとして入っている高級レストランにもこのような傾向がよく見られる。「和」なんてそもそも昔の日本であって、一時は軽視されていたはずなのに、他者によって改めてイメージとして抽出されることでそこに「プレミアム」を感じてしまう、というとこが滑稽だと思った。ここでいう「和」とはレトロは少し違う。むしろモダンだ。以前、東京ミッドタウンを訪れたときに、その前に広がる和風庭園の池のほとりで外国人観光客の男性が一人座禅を組んで瞑想していた。イメージ化された「和」に何か神聖なものでも感じたのであろうか。「和」と座禅。一見正しい組み合わせに見えるが、やはり何か滑稽さが漂っていた。
現在の東京の建物や施設の特徴のひとつとして、このモダンな「和」がプレミアムとしてとらえられていることが挙げられると思う。このプレミアムという考え方について今までにブランド品や戦略についての本を読んできたが、内部だけでなく外部、つまりのハードである建物においてもこの思想が浸透しているのだと感じた。今企業ではどのビルにテナントとして入っているかということもステイタスの一つになっているらしい。東京の建物は興味深い。この本にある現状を切り口としていろんな本を読んでいきたいと思う。実際に訪れたりもしてみたい。
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