明日の広告 佐藤尚之
大手広告会社で働く筆者が、インターネットやメディアの発展によって変化する”消費者”と、それに合わせて広告はどう変化していくべきか、について書いている本。文体が易しく、内容もユーモアに富んでいるのですぐ読める。
『この商品はいいですよ!』という「メッセージ」と、「それがどういう風にしたら相手に届くのか?」という「メディアの選択」を含めて、広告とはコミュニケーションだという話に納得させられた。人と人とのコミュニケーションで話を弾ませるには、自分の話を面白くするだけでなく、話す相手をよく理解して話すことが不可欠だ。広告にもそれが必要だと筆者は述べている。初動、つまり伝えたい相手をよく理解しようとすることが大事ということだ。本書の中ではその一例として漫画「スラムダンク」の発行一億冊突破記念キャンペーンが挙げられている。私はいちファンとして本当にこのキャンペーン(特に黒板に描かれた続編)が嬉しかったので、それを実現してくれた佐藤さんには素直に感謝の言葉を言いたい。広告が新聞広告やテレビCMなど、メディアがマスにむけて「発信」するものが主流だった時代では、いかに「上手い」、大衆の脳に一方的にインパクトを残す広告を作るかが大事であった。今日でもそれは大事ではあるが、ネットによって消費者も発信が気軽にできるようになった今、広告はより消費者の意見を取り入れることが可能になっている。サイトに投稿をさせるなど、消費者に主体性を持たせることで、ファン層により印象を与える広告が作れるのだ。
筆者は早くから、インターネットがもたらすであろう「消費者のヨコのつながり」の影響力に気付き、少人数のクチコミサイトなどを開設していたようだが、どうしてこのように破壊的トレンドを的確に掴むことができたのだろう。おそらく、筆者はインターネットなど新しいメディアに接するとき、それが「広告」という観点において「いったいどんな新しいことが可能になるか?」という枠組みでしっかり捉えていたのではないか。例えば、「個人が容易につながれる」というインターネットの単なる特徴から、今までマスメディアで発信される化粧バリバリの広告のすっぴんが、ネットでは明らかになってしまうことを筆者は導き出した。
これをふまえて私も一つ考えてみる。”Twitterは広告において何を可能にするか?”一つ、twitterは企業と個人の情報配信関係を変える。今まで企業は、マスメディアに広告を流すことでしか、自社を宣伝し、個人とつながることができなかった。これは「企業→個人」の構造で、無駄(広告効果のない、興味のない人にまで広告することになって、効果に比べ余分に費用がかかる。例えば、裸眼の人にコンタクトの広告をしてもしょうがない。)も多かった。それがインターネットの「検索」によって、興味を持った個人が企業サイトに訪れるようになった。これは「個人→企業」で、興味のある人に効果的に広告することができた。しかし、これは個人側に検索労力を要求し、最新の情報を伝えるためには個人にその都度サイトを訪れてもらう必要があった。しかし、Twitterはまず企業と個人をダイレクトにつなぐことができる。そして「企業→個人」としては、twitterにつぶやくことで、最新の情報を効果の見込める消費者に永久的に配信しつづけることができるようになった。googleなど魅力のある企業のファンにとっては、開発された新しい技術を配信してれたらもちろん嬉しいし、企業も広告ができてもちろんすごく嬉しい。つまり手軽にwin-winな関係を構築することができるのだ。ただし、マス広告が新たに消費者層を作り出す側面があるので、二つの広告は同時進行にやってくのがよいと私はおもう。
最後に広告という仕事について。実は私は以前から広告の仕事につきたいとはあまり思わない。お化粧が好きではないからだ。広告によって消費者に価値変容を起こしたとして、それは商品が真に良いものでなければ一時的なものにすぎない。自分の手で一時的な価値を作り出すことにあまり魅力を感じられなかった。でもスラムダンクの項目を見て、人が伝えたい大切な思い、本当にいいと思うものを伝える仕事とは素晴らしいと思う。私は是非この本をメーカーの人にも見てほしい。コミュニケーションを商品開発に取りいれ、真に消費者にとっていいものを作っていってほしいと思う。
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