2009年6月18日木曜日

【ホンヨミ!】変わる中国 変わるメディア【山本】

『変わる中国 変わるメディア』 渡辺浩平 講談社現代新書

 私が中国に関心を持つようになったきっかけは、2007年に勃発した段ボール肉まん事件だった。
国内外の人間を驚かせたこの事件の誤報という事実に、当時私はかなりの衝撃を受けた。
「何故隣国中国では、このような誤報が起きうるのだろう」と、そのときからずっと思っていた。共産党政府により、今でもなお厳しく監視されている現代中国メディアにおいて、このような自国の信頼を著しく下げる報道が許されていることに純粋に疑問を感じたのだ。本書によると、その答えは1990年の中国政府によるメディア産業の市場経済化にあるようだ。この政策により、各メディア産業はそれまでの膨大な助成金を受け取れなくなった。そのため、各メディアは収入を広告費に頼るしかなくなったのだ。他社より高い広告費を取るには、他社より高い視聴率(購買者数)が必要になってくる。他社より高い視聴率をとるには、特ダネが必要になってくる。このような広告費を上げるための方策として、あるテレビ局がとった苦肉の策が、自作自演による段ボール肉まん事件報道だ。
 私たちはメディアから流れる情報によって他国の印象を決めることが多い。それだけ重要なメディアが、操作されていない本来の姿の情報を流せる状態を作ることは、意外に難しいことだと、この本を読んで改めて思った。
 本書によると、中国のなかに、唯一共産党統制下の情報でなくインターネットなど新しいツールを利用して自ら他国の情報を得ている人々がいるという。1980年代後半に生まれた、所謂“八十後”だ。
 今年の夏は、彼らに会いに、そして、テレビで見る中国と、本来の中国の差はなんなのかを見に、中国に行こうと思う。

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