2009年6月19日金曜日

【ホンヨミ!】ジャーナリズム崩壊【岸本】

 本書のタイトル「ジャーナリズム崩壊」はあまり正確ではない。正すなら「腐敗がやっとバレてきた日本のジャーナリズム」といったところか。

 本書は悪名高き「記者クラブ」問題を軸に、日米のジャーナリストのスタンスの違いを、体験を交えて描いている。全体を通じて筆者の憤りが伝わるような文体は読み手を選ぶかもしれない。

 個人的には日米の新聞の誤報を巡る扱いの箇所で、「ベストエフォート方式」や「英米法」を思い出した。個々のジャーナリストの責任で書かれた記事に仮に間違いがあれば、その訂正は大々的に知らせられなければならない。その訂正まで責任を持って初めて報道と呼べるものだろう。(やや性質は異なるが、生放送の報道番組などでの訂正の扱いの小ささが気に食わない。)

 また、以前から日本の新聞の記事に署名がない事も気にかかっていた。単にニュースソースを体よくまとめ、他社と異なる意見を述べる部分は署名なしで記す。これではネットに負ける。優秀な個人個人が集まっていようと、組織として、集団として腐敗していればそれは意味をなさない。せめて記名制にすれば、いざというときのネット時代にも生き延びていけるのではないか。

 筆者はかつてニューヨーク・タイムズに勤務していたため、日米の新聞業界比較に多くが割かれているが、たとえばヨーロッパの歴史ある新聞社や、他の雑誌などの媒体でのジャーナリズムはどのような組織や個人の仕組みで成り立っているのかが気になる。

0 件のコメント:

コメントを投稿