2009年6月29日月曜日

【書評】新聞社 破綻したビジネスモデル【勝部】

毎日新聞の元常務が新聞経営の危機について書いた本。

私は上京するや否や新聞業界に足を踏み入れ、今でもそこにどっぷり浸かっている身なのであるから、この本は前々から読んでみたいと思っていたが、かなり期待はずれの部分が多い。一つは、著者は新聞経営に長らく携わっているが、所詮編集局出身であり、販売については素人の域を出ないということ。もう一つは、毎日新聞という大手の中ではマイナーな新聞社の個別の事情が色濃く出されており、それを新聞業界全体に当てはめるのは無理があるということだ。

今、現場の最前線に立つものとして、新聞経営について言えば、かなり危ないのは言うまでもない。しかし、部数の落ち込みは、特に都市部で著しいが、田舎では逆に微増している地域も少なくない。これは田舎の販売所の独占的システムと田舎の客層が新聞好きであることが要因だろう。田舎の安泰はあと20年は続くと思う。一方、都市部では今後10年以内に部数の激減に見舞われ、部数至上主義も変わってくるだろう。

また、私が勤める新聞社の各販売店について言えば、著者がいう以上に裕福だ。給料とは別に食事代もタクシー代もインセンティブも「大丈夫か?」と思うくらい気前よく払ってくれる。それに私が見たところによると、販売店の所長はたいてい新聞社側よりも立場が高い。そんな力関係では「押し紙」なんてとても無理だと思う。実情を聞いたことは無いが。

とはいえ、業界の誰もが嘆くことは将来性の無さだ。その中でも絶望的なのは、読者の高齢化と広告費の削減だ。もっとも先立たれやすい層が新聞を支えているのはあきらかで、この構造は明らかに危険だがどうしようもない。広告費の落ち込みは、特に折込の落ち込みが深刻だと聞くが、こちらもどうしようもないように思える。どっちにしても、新聞がどんどん斜陽化していくのは目に見えている。

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