2009年6月10日水曜日

【書評】現代の貧困-ワーキングプア/ホームレス/生活保護-【大賀】

岩田正美著「現代の貧困-ワーキングプア/ホームレス/生活保護-」(2007年、ちくま新書)
2009年6月9日読了

★いきなり余談なんですが、私がやっつけで出した「キムゼミ!ホンヨミ!」ラベルを使ってくれている方々が・・!びっくりすると同時にめっちゃ嬉しかったです。というわけで私も便乗して・・「書評」と一緒にくっつけてみました(笑)

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 貧困問題に興味があるので、どうしても自分の興味のある本を読もうと思うと偏ってしまうな、と思いつつも・・今週は「セルフリーディング期間」なので、この機会に「ツンドク」して放っておいた本を読んでしまおうと考えた。久々に自分の好きな分野に戻ってきたが、何だか本の読み方が変わったような気がする。以前よりも効率的に時間をかけないで読めているのかもしれない。
 本書の著者である日本女子大学教授の岩田正美さんのお話を、5月に聞く機会があった。この本はシンポジウムの後に主催側である共同通信労働組合の方に借りたものだ。岩田さんのお話を聞く前に読んでおけばよかったという反省を念を抱きつつ・・。さすが「大学教授」すなわち研究職に就いている人の本、というべきか。先に書評を記した「ネットカフェ難民」の本が、フィールドワークや若者たちとの対話で成り立っているとするならば、本書は別の「研究」という観点から貧困問題について明らかにしている。計量的なデータから貧困を読み解くことができるという点では非常に役立つ本だとは思う。どちらかといえば感情的な部分の有る私にとっては、岩田さんのあくまでも客観的な視点に立とうとする文章の書き方はあまり好きになれなかった。
 とりわけ首を傾げたくなったのは、ホームレスの男性に話を聞き出しつつも、「相談役」として相談をされることは望まなかったという岩田さんの姿勢だ。男性の「その後」(生活保護をきちんと貰えたかどうか)を気にしながらも突き放すという姿勢は何となく無責任に思える。あくまでも対象を「客観的」に捉え、感情移入をしないという姿勢は、研究に必要なものなのかもしれないが。しかし岩田さんの言う、貧困に対する「日本人の優しい配慮」が返って貧困者たちを追い詰めているという言葉は印象的だった。日本人は、ホームレスや日雇い派遣労働者の人々を見ても、「臭いモノに蓋」をするように「見て見ぬふり」をする傾向がある。私たちは、その姿勢を良いものとして捉えているが、実際にはそうではないのだ。しっかりと向き合っていかなければならない、と思った。
 

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