2009年6月26日金曜日

【ホンヨミ!】ミラーニューロンの発見【宮村】

他人のしていることや考えていることや感じていることを私たちはどうしてわかるのか。その事について、神経生理学の分野から非常に説得力の高い説明を与えるのがミラーニューロンである。ミラーニューロンは、自分や他人の(主に)行動に対して発火する脳内の特殊な細胞群だ。例えば、映画のキスシーンを見ている時に自分の脳内で発火しているいくつかの細胞は、自分がキスをするときに発火する細胞と同じ物であり、これがミラーニューロン。つまり、他人の行動を見るだけで、他人と同じ行動のシミュレーションを脳内で行い、自分自身の運動計画を強化してしまう。ミラーニューロンの発見の経緯や具体的な実験の事例に関しては、マカクザルの脳のF5野の実験(ミラーニューロンが発見されるきっかけとなったもの)を初めとして極めてサイエンティフィックな実験方法の数々が紹介されていて、専門性の高い所も多く理解が及ばなかった所も多いが、最も強烈だったのは、他者への共感や感情とミラーニューロンの関係性についての部分である。

ミラーニューロンは「行動・動き」に対して発火する性質があるから、当然、他人の顔の表情に対しても発火する。そのため、私たちは他人の表情を見ると、自分が意識する間も無く自動的に、表情のシミュレーションを脳内で行い(ミラーニューロンが発火する)、これと同時にミラーニューロンは感情中枢に信号を送る。これによって、自分が見た表情と関わりのある感情を私たちは感じるというのだ。この流れで、模倣と共感の関係など、極めて科学的な根拠と方法論に基づいた考察も展開されていき、非常に好奇心が刺激される本だった。

神経学的な科学的方法論の進化は、おそらくマーケティングなどの分野に対しても今後より大きな影響力を持ってくると思う(感情や共感について、科学的な説明ができると主張しているし、データに基づく根拠も揃ってきているから)。そのような時に、例えばマーケティングなどの方法論は今後どのように変化していくのか、大変興味深い。

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