水島宏明著「ネットカフェ難民と貧困ニッポン」(2007年、日本テレビ放送網)
2009年6月7日読了
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4月のシンポジウムに学生ボランティアとして参加した。そこで扱われたひとつのテーマが「貧困問題」だった。「中流階級」だと言われている日本社会が貧困問題を抱えているといわれても、正直なところ私にはイメージできなかった。だがシンポジウムに参加し、本書の著者である水島さんのお話を聞き、私が考えていたよりも深刻な「格差」そして「貧困」という事実が在ることを知り非常にショックを受けた。本書は「ネットカフェ難民」という人々を中心に現代日本の貧困問題を赤裸々に暴き出したものである。
「ネットカフェ難民」という言葉を作り出したのは著者である水島さんだ。彼は、日本テレビのNNNドキュメントにおいて、ネットカフェを渡り合いながら日雇い派遣として働く若者たちへの密着取材を行い、その後2007年1月の「ネットカフェ難民-漂流する貧困者たち」という番組を放送した。初めて地上波放送で「ネットカフェ難民」の事実を伝えたこの番組は人々に大きな衝撃を与えた。なぜ、「ネットカフェ難民」という名前がつけられたのか?水島さんはその理由についてシンポジウム内で次のように語っていた。「決められた時間に指定された場所に労働者が集められて、トラックに乗せられてその日働く場所に連れていかれる。この『日雇い派遣』の様子が、船に乗せられて連れていかれる『難民』のそれと同じなように見えた。」-どこへ行くかも、どこで何ができるかもわからないまま漂流する難民たち。その姿は過去のものでもなければ、異国のものでもなかった。現代日本社会に間違いなく存在するものだったのだ。
本書の中には、私と同年代の若者たちが、色々な事情(家族からの虐待など)により家に帰ることができず、ネットカフェで寝泊まりしながら日雇い派遣をしている様子が描かれている。その姿はあまりに悲痛で、思わず目を背けたいようなものばかりだった。だが、「目を背ける」という行為が何よりも非道な行為なのかもしれない。彼らは社会の波に流されながらも必死に生きている。その姿を認め、支援の手を差し伸べることが、私たちに求められているのかもしれない。
シンポジウムに参加してから、私は蒲田に行った。蒲田のネットカフェが、いわゆる「難民たちの場所」となっていると聞いたからだ。古ぼけたビルの1階にあるネットカフェに着いたとき、ちょうど中から明らかに「ホームレス」と思われる外見の男性が出てきた。彼は私の方など見向きもしないまま、ゆっくりと立ち去って行った。私は、ネットカフェの中に入ることができなかった。入る勇気がなかった。私には、現実を受け止める覚悟がなかったのだ。私は、ただ、男性の後ろ姿を見つめることしかできなかった。
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