2009年6月2日火曜日

【書評】ロングテール‐「売れない商品」を宝の山に変える新戦略【大賀】

クリス・アンダーソン著、篠森ゆり子訳、「ロングテール‐『売れない商品』を宝の山に変える新戦略」(2006年、早川書房)
2009年6月2日読了

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 「ロングテール」という言葉を初めて知ったのは、大学一年の秋だ。サークルの練習に追われてすっかり欝状態になっているときに読んだ梅田望夫氏著作の「ウェブ進化論」の中でその言葉を目にした。従来であれば売れなかった商品が、インターネットの発達によって人々の目につくようになり、結果、利益を上げるようになったという「ロングテール」現象。その言葉の言い回しと現象の面白さに私はすっかり夢中となり、気がついたらメディアコムを受けることを決断していた。当時の私にとってはただの「娯楽」に過ぎなかったインターネットが、新たなビジネスチャンスを生み出しているという事実。それを研究してみたいと思ったからだ。そのため、「ロングテール」という言葉は私にとって非常に印象深く、そして同時に思い出深いものなのだ。
 しかしそんな「ロングテール」という言葉を提唱した本人の文書を今まで一度も読んだことがなかったことに自分自身でも驚いた。そして本書を読み、すっかり理解したと思っていた「ロングテール」現象が、実は奥深いものであるということを知った。私の知識は単なる付け焼刃的なものに過ぎなかったのだ。有名な言葉ほど耳にする機会が多くなり、「わかった」ような気になってしまう。「ロングテール」以外にもそうした状態に陥っている例はあるのかもしれない。今後は「わかった」フリをするのではなく、しっかりと本やその他情報に目を通した上で、自分の言葉で説明できるレベルにまで至らなければ駄目だと感じた。

 クリス・アンダーソン氏はロングテール現象をネットショッピング世界以外にも見ている。 ウェブ2.0的なサービス。すなわち、youtubeなどの動画共有サイトや、SNSやブログといったユーザー主導の情報発信型システムの中にも、現在進行形でロングテール現象が起こっている。かつてはいわゆる「プロ」が作った創作物のみが人々の目に止まり、受け入れられていたが、今やプロよりも「アマ」の創作物の方が面白いとされる時代だ。筆者はこうした現象を総称して「生産と流通の民主化」と述べている。市場の在り方が、買い手と売り手という単純構造ではなく、誰しもが買い手となり、また売り手となり得る時代が到来したのだ。
 筆者があとがきの最後に書いている一文が印象的だった。「テールの未来」として、「今後問われるのは、選択肢が増えるのはいいことかどうかではなく、本当に欲しいものは何かだ。無限に広がる商品棚の上に、載らないものは無いのだから」と述べている。インターネットが定着した今、そして未来においても、「テール」側に置かれる商品への注目は安定して続くだろう。そこで問題となるのは、人々にとって「本当に欲しいもの」を提供する力だ。そして私たちもまた、数多くある選択肢に惑わされることなく、「本当に欲しいもの」を見極める力が必要とされるのではないか。

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