2009年6月2日火曜日

【書評】明日の広告【斉藤】

 明日の広告 佐藤尚之

 ある誰かとコミュニケーションしたい、と思うとき、その人のことを全力で知らなければならない。その人が何を考えているか、何が好きなのか、どうしてほしいのか。そうすればその人の心の門戸は本の少しでも開くのではないだろうか。広告も同じである。

 最近のトレンドはネット広告、CMが広告の王道を行くのはもう過去のこと、と本書を読むまで思っていた。本書は明日(これから先)の広告のあるべき姿をわかりやすく教えてくれる。私が現在の広告の実情を知ったきっかけになった本だ。確かにネット広告は以前より格段に増えている。しかし、それはネットがトレンドだからネットを使うのではなくて、消費者の行動を考慮した結果、たまたまネットを使うことが望ましくなっただけなのだ。広告する商品やサービスを利用するだろう消費者層がテレビが好きならテレビCMでもよいし、渋谷の街が好きなら街を広告にしてもよい。相手の「好き」を全力で追及する。それがこれからの広告には欠かせないことだ。さらに消費者の行動を追った結果、ひとつのメディアだけでなく多数のメディアを線でつないで消費者をより商品に近づける、というクロスメディアという方法も紹介されている。

 結局、人と人のコミュニケーションも、広告と消費者のコミュニケーションも変わらないものだ、と思った。まずは相手を徹底的に知ることが不可欠だ。ネットだけが勝者ではなく、新聞もテレビも雑誌もまだ生き残っていて、それぞれによいところがある。しかし、より先の未来のことを考えると、そもそも広告を伝える媒体であるメディアという考えさえ不要になるのではないかと思う。テレビ放送がデジタル化されるに伴って、今後あらゆるものがデジタルコンテンツ化されていくような気がする。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿