2009年6月10日水曜日

【書評】プレミアム戦略【戸高】

遠藤功著『プレミアム戦略』

 今まで、この書評の中で、ルイヴィトン、サマンサタバサと、各ブランドのこだわりや戦略を見てきたが、今回の『プレミアム戦略』は服飾、時計、自動車、食品と幅広いジャンルを網羅しており、まさに、ブランドのプレミアムを広く理解するにはいい本だったと思う。
 そもそも、これを読んでやっぱりサマンサタバサはプレミアムじゃないと思った。サマンサタバサというブランドはプレミアムブランドではなく、マスブランドである。サマンサタバサ自身もマスブランドがとるべき手法としての販路(150という国内の販路は、プレミアムブランドになるには多過ぎ、希少性はないだろう)や、広告戦略(認知のためだけでなく幅広いメディア展開)をとっており、そちらで世界を目指しているのだろう。

 さて、プレミアムといっても大別して、まさに車ならフェラーリ、真珠ならミキモトといったような高級品と、ビールでいうプレミアムモルツなど「ちょっとプレミアム」の2種類に大別されるだろう。
 この本が書かれた当時は日本の景気が回復傾向にあり、日本でプレミアムブランドが成長するためにはいかにすべきかということを主に考えているが、やはり日本の文化的性格上(昔から町人文化が、自己の満足のためにプレミアムをはぐくんできた)、ちょっとプレミアム志向を目指すのがいいのではないか。もちろん、世界的プレミアムになることもできるブランドもあるだろうが。
 ちょっとプレミアムを目指す上でも、やはり必要となってくるのは「ストーリーテリング」だろう。その商品の開発に携わる裏話もさながら、その商品がいかなる生活価値を我々に提供してくれるのか、ということが重要になってくる。
 まさに、appleのi-podなどは、そのCMで、i-podで聴く音楽がある生活の楽しさというものを前面に打ち出しているし、最近のユニクロのCMもユニクロを着て楽しむ生活というものが伝わってくる。
 他にもSONYのHANDYCAMのページ上のコンテンツであるCam with meというサイト(http://www.sony.jp/products/Consumer/handycam/camwithme/)では、「毎日がスペシャル」というキャッチコピーに合わせて、実際にそのカメラを通して子供の成長を見守ることができるという宣伝サービスを行っている。こうした疑似体験を通じて、その商品がいかに自分の生活を彩りあるものにしてくれるのかといったことを提示するのは、様々な商品があふれ、差別化するのが難しい現代社会において重要になってくるのではなかろうか。

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