2009年6月26日金曜日

【ホンヨミ!】脳と創造性【菊池】

 茂木健一郎の著書を読むのは初。本書も脳についての話であるが、そこに人間の感情の本質らしきものがあらわれてるなーと思った。そう感じた理由の一つに、社会科学と現実とのギャップの存在がある。ここでの社会科学とは、合理的かつ価値が見出されているようなルールとしておく。

少し話が外れるが、大学教授にはいわゆる左寄りの人が多いと言われる。あくまでも私の個人的な考えだが、彼らは知的レベルが高いゆえに、他の一般人も彼らと同じく合理的な行動を選択できるという期待が大きいからではないか。「左翼」とは、センセーショナルな「右翼」に比べ、ロジカルであることが多い。その極みが社会主義という超合理的な理論だ。社会科学も、例えば政治分野では「国民主権」や「三権分立」といった理想のルールが存在するが、現実はそれとは事実上かけ離れていると言ってもよい。これが、最初に挙げた、社会科学と現実のギャップである。そのギャップの最大の原因が、人間の感情なのだ。感情の存在を無視すれば、それは上手いマネジメントとは言えない。これは社会主義が、欲望という感情によって崩壊したことから自明である。社会科学を信奉することは、何でも合理的に動くと信じ、しばしば人間の感情を無視することが多い。

しかし本書でも述べられているように、いざという時には明示的なルールは役に立たず、むしろ人間の感情に支えられた直観によって決められる。もし学問によって未来が全て予想でき完璧な判断ができたなら、今回のような金融危機は起こらなかったはずだ。このように、この世界は不確実性に満ちている。そのような中、最後は感情によって根拠のない判断、つまり直観で決定がなされる。「ルールによるコントロール可能性というフィクション」と本書は素晴らしいフレーズにまとめているが、ロジックというコンピューターの十八番を補う、感情の力の素晴らしさを再認識できる本だった。

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