ブレインの戦術 岸博幸
襷を渡してしっかりとその背中を見送ること。築き上げた財産をしっかりと受け継いで、その背中を後押しすること。現在そんな力が日本には不足しているように思う。かつて竹中平蔵大臣の秘書官として構造改革の立案実行に携わった岸氏は、既得権益を守ろうと目先の目標のみに目がいっている「年寄り」は、未来の日本のを担っていくはずの「若者」に対して引き継ぎができていないとし、だからこそ今若者たちが自ら立ち上がって未来に向かって走らなければならないと説いている。しかし現在その若者たちにすら活力が不足している。そんな若者たちが立ち上がるのには、まず自分の軸を確立するために自分がやりたいことを明確にし、自分を表現するチャンスを逃さないことが大切。次に、実行するための流れをつくること。そのためには情報にアンテナを張って自分で裁くこと。それから自分に賛同してくれる「良き仲間」を引き寄せるために、自分自身がよいコミュニケーターになること。さらに自己利益を追求してしまうがために横道に逸れないこと。そのためには自分の行動が社会的にどんな意味を持つかという大義名分を見出すことが重要だ。このような流れで岸氏は私たち若者を啓発していく。
岸氏は、秘書官の経験を通して学んだことや、趣味であるロッククライミングの経験を通して得たことをふんだんに混ぜながら、上記のような流れをつくるには具体的にはどのように行動していけばよいか、を力説していて、思わず手帳に書いておきたくなるようなキーワードが多くあった。なかでも「まずは今いる場所、今与えられている仕事に全力投球する」という言葉が一番心に残った。自分が本当にやりたいことはこれではない、今やっていることは副業にしかすぎないから一生懸命やっても意味がない。私はこのような思考に陥ることがよくある。ゼミの活動でも、本当に自分がやりたいことはこれでいいのだろうか、と思うことがあった。しかし、今の状況に全力をささげられないようでは、仮に本当にやりたいことが見つかったとしても全力でやるための活力は湧いてこないと思った。その上やりたいことが何なのかもはっきりしていない現在、目の前にあることに全力投球しないことは、自分の可能性を発見するチャンスを逃していることになる。そのようなスタンスでゼミにも臨んでいきたいと思った。それに自分なりの解釈を付け加えるとすれば、優先順位をつけること。全てを完璧にしようとすることは、よけいに腰を重くする原因となるからだ。
岸氏にひとつ賛同できない点があった。それは岸氏が考える「仲間」や「人づきあい」に対する考え方だ。同氏は、同じ志を持ち、自分を後押してくれるようなひとと付き合うのが良い、としている。このような啓発本の多くはそのような人間関係をよしとし、逆にくだらないはなしをしたり自分に利益をもたらさないような人間関係は構築しない方が良いとしているが、私は後者の人間関係も大切だと思う。自分の目標に向かって一直線、そしてその目標にあった関係のみを築いていくのは確かに効率的だと思う。しかしそれを行うにあたって、周りのひとをはね退けていることに気づかなければならないと思う。一緒にいて利益をもたらさない人でも、自分のことを必要としているかもしれないし、ふとしたときに安心感を与えてくれている存在かもしれないのだ。本書には家族や人間関係を理由にやりたいことを断念することがよくないこととして書かれているが、私はこれは正当な理由になりえるのではないか、と思う。何をとるかは自分次第だ。ここでも自己実現に捕らわれずに優先順位をつけることが必要だと思う。
全体的には読んだあと、非常に活力をもらった気分になれた。明日から実行できることはぜひ取り入れていきたいと思う。
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