2009年6月25日木曜日

【ホンヨミ!】ブランド大繁盛【田島】

堺屋太一「ブランド大繁盛」

「ブランド 価値の創造」「プレミアム戦略」「サマンサタバサ 世界ブランドをつくる」などに続き、ブランドという高価格帯を扱う本はこれで4冊目。現代のマーケティングにおいて「ブランド」というものが重要な位置を占めるということは理解できたが、どの本を読んでも「どういうことをすればブランドになりえるか」ということはよくわからない。ブランドは非常に繊細なバランスの問題であり、一般論というものが出しづらいのだと思う。

この本においては、ブランドというものを「伝統ブランド」「大量生産ブランド」「知価ブランド」の三類型に分類している。これまでの本で「ブランド」とされてきたものは、おもに本著では「知価ブランド」として扱われている。「知価ブランド」とはその価格の圧倒的な部分が「知価」つまりイメージに支払われているものである。逆に、高価格をつけることによってブランドは「イメージ」を作り出しもする。
さて、今年度上半期ヒット商品番付の一位にも輝いた「ファストファッション」について考えてみる。「ファストファッション」が支持されている理由は「安いのに可愛い」ということである。つまり、高級ブランドにまでは及ばないものの、「消費者が満足できる程度」のデザイン性と「廉価価格」を両立しているところがポイントである。以前まで、デザイン性はファッションブランドだけのものだった。しかし技術の向上やグローバル化による安価な人件費の獲得によって、「ファストファッション」のデザイン性はどんどんあがっている。人々は、自分たちが高級ブランドに今まで支払っていた「知価」に出費しなくても、似たようなデザインのものが安く買えることに気がついてしまったのだ。また、最近人気のファストファッションには「一商品大量生産」ではなく「多種類少量生産」という戦略をとっているところが多い。商品はすぐ入れ替わるので、消費者は気に入ったらすぐ買うことが求められている。「知価ブランド」が生産数を抑えることで消費者に与えてきた「飢餓感」は、ファストファッションにおいても可能なのだ。

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