「計算不可能性を設計する―ITアーキテクトの未来への挑戦」著・神成淳司 宮台真司
とても面白く読めた。
正直、金ゼミの授業を受け、新しいテクノロジーやビジネスモデルについて学びながら、ずっと頭のどこかで感じていたことがあった。それはテクノロジーに関する不安である。「便利さの獲得によって印象に残る体験は減っていくのではないか」「SNSサイトは若者を孤独にしないか」。新しいテクノロジーを学ぶことはワクワクするが、私は政治学科の学生で社会問題にも興味があるので、同時にそのようなこともいつも考える。ポストモダン論の世界では産業革命や方法論など、理性によって技術が進歩した近代において、孤独感や環境問題などさまざまな問題が生まれたと考えられる。技術の進歩は素晴らしいことだが、それに人間自体の能力がついていけるかについては不安だ。しかし金ゼミの議論ではあまり社会問題についてはふれられないので(確かに解決のない世界ではある)、ITの人の側ではあまりそういったことは考えられないのだろうかと思っていたが、この本に出会うことが出来て安心というか、少し胸がすっきりした。
この本はIT技術のアドバイザーである神成氏と社会学に詳しい宮台氏の対談を収録した本である。つまり、IT技術の進歩が社会に及ぼす影響について社会学的に考察した本である。たくさんの例が収録されており、どれも問題点に富んでいておもしろい。一つずつに対してゆっくり自分の意見を考えてみたくなる。技術がつながり、人と人をつなぐものはどんどん簡単で手間のいらないものとなっていく。しかし人間は変わらない。私たちは新しい技術に対して常に慎重な態度で向かっていくことが必要だ。
友達の一人が他大学の薬学部に行っているのだが、彼女によると周りの学友たちは研究面において非常に優秀であるが、社会知識や歴史に疎く、無関心で驚くほどだと嘆いていた。私たち文系の人間も、もっと現代の進んだ技術に関心を持つべきであることはもちろんだが、同時に技術研究の人たちについても、もっと社会のことについて考えてほしいと思う。行き過ぎた技術が世界に悲劇をもたらしたケースはいくらでもあるからだ。いつか金ゼミでも一回、そういう社会問題についても議論してみたいなあと私は思っている。
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