2009年5月10日日曜日

【書評】新聞社‐破綻したビジネスモデル【戸高】

河内孝著『新聞社‐破綻したビジネスモデル』

 河内氏の論の根本としては、発行部数至上主義によって支えられてきた、新聞の売り上げに匹敵するほどの広告収入は、逆にその発行部数至上主義により崩壊へと向かっているといったものだろう。それを著者が毎日新聞の実態やデータを引用しながらわかりやすく解説している。新聞社のビジネスモデルから、発行部数と実売部数のかい離や、販売部門の闇、また新聞と放送のメディア史を俯瞰した内容やその中で新聞社がどのように自社の利益を得ようとしたのか、そして読売、朝日に対抗する第三勢力としての新聞の未来への展望、ITとの融合といった内容が書かれていた。以下には私のこれからの新聞の未来についての私見を述べる。
 
 電子新聞の誕生が叫ばれて久しい。日経新聞は2010年以降には電子新聞を開始するつもりであることを今年の1月に発表している。電子新聞が創刊されれば速報性といった面でもネットに引けを取らないことになるだろうし、下がり調子である新聞広告費用も、紙媒体広告よりも格段と安い広告を複数打つことにより上昇を目指すことができるかもしれない。
 さらには広告費用の他にも、「新聞のロングテール化」という考え方はメリットとなりうると思う。メジャーなニーズはなくとも、一部には確実に読んでもらえるといった記事を電子新聞で配信することができれば他の新聞会社との差別化を図ることに成功できるだろう。
 しかし、電子新聞にはデメリットも出てくるだろう。新聞が創刊して以来長年の歴史をかけて築いてきた販売網、販売モデルは電子新聞には適用されるわけがない。電子新聞により紙媒体での新聞読者が減ることも予測され、従来の新聞ビジネスモデルはさらに破綻に向かうことになるだろう。
 はたして電子新聞が日本に根付くのかどうかは私にはわからない、世界でも成功の例を見たことがない部分であるのでまだ未知数であるのは確かである。しかしモバイルが最も発達している日本だからこそできるかもしれないといった期待が大きい。
 
 もうひとつ、著者が上げていた、「読売、朝日に続く第三の極」についての私見を述べる。原理上は簡単に合併なり提携して、地方、都市に各新聞社が築いてきた販売網や購読者を利用して対抗することは容易だろう。しかし、それを行ってしまえば新聞という業界が単なる寡占になってしまう恐れもある。はたしてこの業界において寡占がいのか悪いのかはわからない。
 個人的にはあまり第三の極を形成する必要が感じられなかった。著者も述べているように、新聞の本質はそこにある記事なのである。記事の内容を先ほどの電子新聞のところで書いたように差別化を行ったり、マスコミ批判が出ないように徹底的な取材、執筆を行うなどして本質で勝負してほしい。

1 件のコメント:

  1. 新聞の必要性が薄くなったことを誰も認識していない点が大問題でしょう。かつてはラヂオで聞いたことを新聞で確認する、みたいな活字メディアの言うなれば保証機能が有効に働いたと思いますが、TV、新聞、ITと並べれば速報性のフリばかり目立って、新聞の存在価値がみえないのです。

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