2009年5月22日金曜日

【書評】経営戦略を問い直す【宮村】

戦略とは何か、ということそのものを問い直す本。戦略とは、新たな市場取引を創造しそれによって人々の幸福度を増進させるものであると著者は定義し、戦略の目的は長期利益の最大化にあると説明する。

例えばDELLのマイケル・デル氏は「市場に素早く者を届ける事」「同業他社に顧客サービスで負けないこと」「最高の性能と最新の技術」「インターネットの可能性をいち早く開拓すること」を4つの競争戦略として掲げているが、これは著者から見れば戦略というよりも「掛け声」に過ぎないという。掛け声であれば、いくらでも掛けることができるが、それは成果に繋がるものではない。しかしながら、現在の世の中でいわれる「戦略」の大半は「掛け声倒れ」に終わってしまっていると著者は指摘する。その原因として、戦略が抽象名詞であり、自ら戦略を経験することを通してでしか本当につかむ事ができないというつかみ所のなさがある。

また、実害に繋がる戦略を生んでしまっている根底的な原因には、戦略を客観的な「サイエンス」に昇華させようとする価値観が蔓延している現状がある。それは主観性を嫌い、再現可能な普遍性を求める動きであるが、戦略とは本来的に主観性をもつ。例えば、ある時代で偉大なリーダーと言われた経営者が別の時代で同じように通用するとは言えない、ということである。すなわち、戦略の有効性は時間的場所的なコンテキストに依存するということである。

未来の予測が困難な現代では、単なる分析的発想からでは不十分であり、さらに統合的な発想での経営が必要なのである。

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