「新聞社 破綻したビジネスモデル」 著・河内孝 新潮文庫
現在の新聞というメディアの今後を考えるうえで、非常に勉強になる本であった。「再販制度」「押し紙」など新聞社が現在抱える問題についてより深く知ることが出来たできたばかりか、それらがいずれ訪れうる「新聞崩壊」の氷山の一角に過ぎないということも理解することができた。筆者は元毎日新聞社の常務であり、実体験に基づく情報を提供してくれる。筆者が語る少々生々しい新聞テレビ業界の実情からわかるのは、紙面では「時代」を追っていながらも、急速に変化しつつある自分の周りの環境には鈍感、もしくはあえて見ようとしない、ガチガチに保守的な新聞社(の上層部たち)の姿だ。「補助金」「癒着」など、新聞のビジネスモデルには未だ合理的でない(ある意味日本的な)部分が多数存在し、必要以上の経費をかけている。急速にネット化が進む今、「夕刊廃止」どころではない、もっと抜本的なビジネス改革が今の新聞社に必要なのは明らかだ。
今後の新聞はどうなっていくのであろう。心に残ったのは「新聞の機能とは、プロの記者が記事を書き、対価を払ってそれを入手したいと思う読者がいるかどうか。」という筆者の主張だ。新聞社の価値とは人材なのである。それを見るのが紙であるか、スクリーンであるかは問題ではない。ウェブ化に伴い、世界各地に新たな「ジャーナリスト」たちが毎日生まれている。新聞は、人材と資金力を使い、ブログ等とは一線を画した、信頼のおける記事を作り出していかねばならない。情報の量よりも、質を保つことこそが、これからの新聞社には必要だと私は考える。
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