2009年5月8日金曜日

著作権とは何か-文化と創造のゆくえ

遅くなって申し訳ありません。本の感想を投稿します。

「著作権とは何か」 -文化と創造のゆくえ 著・福井健策 集英社新書

 先日クリエイティブ・コモンズの顧問としても知られるレッシグ氏の講演会を聴講し、著作権問題について強く関心を持っていたところだったので、いいタイミングで読むことができたと感じている。内容は日本の著作権法について、概要や歴史を、たくさんの実際の事例をあげながら解説するというもの。これだけ聞くと堅苦しそうだが、著作権法に疎い人でもわかりやすいように、易しくなおかつ丁寧な文章で書かれていて読んでいて気持ちがよかった。書き手は文章が上手く、語り口は軽めだが無駄な文章がない。この本を読んで日本の著作権法の概要を確認することができ、大変ためになった。「音楽の著作権とは楽曲と歌詞を指し、歌声や演奏は著作物ではない。(著作隣接権で守られている。)」「アイディアの段階では著作物ではない。」など、知って驚いたポイントも多かった。多数収録されている実際の事例、判例は解説をわかりやすくしてくれるだけでなく、話としても面白く読めた。
 筆者は「著作権とは、活発で豊かな芸術文化活動の土壌をつくるためにあるのだ」と主張する。その姿勢に心を打たれた。本文中でも筆者は、悪意のある模倣などには厳しいものの、パロディなどの自由な芸術活動には常にあたたかい目線を向けている。やみくもに権利を主張して論理をふりかざす弁護士のヒステリックな論調とは違う、レッシグ氏からも感じたアートへの愛がこの本には存在している。
確かに著作者の権利は守られるべきである。保護しなければプロを守ることはできない。しかし行き過ぎた規制は、芸術活動全体を衰退させていく危険があるのだ。
 アートとは、美しい庭のように感じる。インターネット普及の時代、誰もが発信者になれるようになり、それを犯すにしろ犯されるにしろ、われわれ市民にとってアートや著作権はぐっと身近なものとなった。われわれこそが、もっとも著作権を意識し、その美しい庭が踏み荒らされ荒廃してしまわないよう常に敬意を払い、つとめるべきである。

 著作権について考えるときに非常に有用な本であり、是非これから手元においておこうと思う。

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