2009年5月22日金曜日

【書評】小泉政権「パトスの首相」は何を変えたのか【山本】

 『小泉政権「パトスの首相」は何を変えたのか』 内山融 中公新書
 
 筆者によると、小泉元首相の政治手法は、情念(=パトス)に訴えかけるものらしい。そのため小泉は「パトスの首相」と言える。例えば、あの印象的な「ワンフレーズ」を使用した演説や善悪の対立構図を強調した政治の「劇場化」などだ。
 小泉首相を、強いリーダーシップの持ち主として称賛する意見をよく聞く。その一方で、彼のメディアの巧みな利用によって国民が政策の良し悪しに盲目になってしまっていたとする非難の声もまたよく聞く。例えば小泉首相と竹中大臣を筆頭に進められた新自由主義の負の遺産として今非正規雇用者数は鰻昇りに上がっていっている。しかしこの政策に反対した国民はごく少数の学者などの知識人層だ。
 ワンフレーズや善悪の対立構図などは、理解し易く国民の理解を得易い。しかしその一方で善悪を見極めにくくしてしまう。しかし、一番大事なことは、政治家の演説方法でもなくメディアの論じ方でもなく先ずは国民の政治への意識なのではないかと改めて感じた。

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