2009年5月29日金曜日

【書評】ルイ・ヴィトンの法則【宮村】

事業多角化したブランド・コングロマリットの中でも特異なブランドであるとされるLVMH取り上げ、そのブランドの形成について4P+Brandingの観点から深い考察がなされた本である。

LVMHの4Pのうち、Product(製品)に関して印象深かったのは、贋物に対する徹底的な駆除体制である。「ブランドにただ乗りする贋物は絶対に許さない」という言葉にも表れているように、消費者向けの「啓蒙活動」、企業へ向けた「警告書」といった活動だけでなく、贋物製造者の模倣を許さないような独自性の高いラインを商標登録意匠登録するという風に、対策が徹底されている。
Price(価格)に関しては、日本での価格設定についての話が興味深かった。1970年代の日本人による「買い付け騒ぎ」によって日本での販路を正す対策がなされたという話も面白かったが、その際の販売適正価格を決める際に、「顧客が価値を認めるかどうか」という要素が重要であるという。具体的には、品質/機能性のようなハード面とデザインや流行性といったソフト面の複合によって価値が成立するとあったが、これは今回の3冊で読んだ「イノベーションを生み出す力」で言われていた「次元の見えにくい価値」とも通ずるものを感じた。
Place(流通)については、やはりルイ・ヴィトン表参道店の展開(一等地立地の法則)の話が印象深い。ブランドにマッチングした街並みに惹かれたブランド群があつまり、結果として街の印象が向上し、さらに他のブランドの出店が加速するという法則は、正の外部性に近いと感じた。
Promotion(販促)については、「テレビCMの禁止」の話がある。これは他の高級ブランドにも言えることだと思うが、TVCMでは、その前後のCMの印象と混ざる危険性やバイアスの問題が高い。ヴィトンのCMについては全く知識はないですが、「TVCM禁止」の話を読んで、村上隆氏とFantastic Plastic Machineという音楽アーティストとのコラボで制作された「superflat monogram」というヴィトンのPromotion Videoを現代美術館で見たのをなんとなく思い出しました。

具体的な方法論/技術の継承と、高い職人の技能に裏打ちされたヴィトンの強かなブランドに対して魅力を感じた本でした。

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