2009年5月21日木曜日

【書評】ロングテール【池亀】

これまでゼミの議論にも何度も登場した「ロングテール」だが、本書を通じ、あらためてインターネットがもたらしたこの市場の変化の大きさに感激した。つい十数年前までなら、消費者はある一定の水準のごく限られた商品しか手にすることができなかったが、インターネットが普及し、それが商品スペースや地理的制約を解消し、さらに探索費用を大幅に下げたことで、さまざまな商品が消費者の目に届くようになった。もしかしたらインターネットは、消費者自身も気づいていなかった自分自身の多種多様な嗜好を解放させたのかもしれない。しかし、消費者のそれぞれの必要性や希望に合致する商品を提供することは、決して簡単なことではない。ニッチ市場がヒット市場と並ぶほど大きなものへと成長する可能性を秘めているだけに、この先さらに高性能なフィルタの開発が求められる。
さらにインターネットがもたらした影響はこれだけでない。クリエイティブコモンズの議論でもでたように、インターネットはこれまで消費するだけの側にいた人々を、今度は生産者の立場にもおいた。つまりプロのヒット商品の独占市場が、アマチュアの人々へも開かれはじめ、それがテール拡大の一因となっているのだ。テールが拡大することで、一部の分野の商品の売り上げが下がるとの懸念もあるが、この流れに逆らうことはできないだろうし、これを機により多くの人が楽しめる市場が形成されるといいと思う。

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