2009年5月21日木曜日

【書評】プレミアム戦略【斉藤】

プレミアム戦略 遠藤功

 プレミアム。この言葉は現在では一歩外に出れば溢れかえっている。プレミアムとは、商品の本来の価値に対する「プラスαの価値」である。消費者がそのプラスαに対して余分な対価を払う価値があるか、が決め手だ。そういった理由で値段の高いものだけでなく、なかなか手に入らないような希少なものもプレミアムと呼ばれている。本書では、特にブランド品に関して、プレミアムであることの重要性を論じられている。

 日本では今プレミアム市場が白熱しているといえる。その背景には消費構造の変化がある。以前活気があった中価格帯は苦戦するようになった。格差社会の影響で、消費活動は二極化した。さらに中価格帯の中から比較して購入という「横の拡がり」から、安いもの、高いものをモノによって買い分けるという「縦の拡がり」に移行した。そして、時代の閉塞感から、消費者は商品にアイデンティティを求めたり、日常のなかの「少しの贅沢」を求めるようになった。もはや大量消費社会は終わった。消費者は「こだわりがって使いこなせるもの」を求めている。

 最近友人とこんな話をした。「最近の服って、どこで買ってもみんな同じようなデザインだよね。お店ごとの特徴がないというか・・・。」 日本は今までどちらかというと、中価格帯同士の競争の結果、その企業の分野ごとに利益を上げていた。競争の結果、商品が同質化したのだ。ちょうどこのような会話をした後だったので、本書はその根拠を与えてくれるものとしてとても有意義に読めた。しかし、もう消費の形態は移行しつつある。サマンサタバサの話と似ているが、ここでもまた日本発のプレミアムが発達しないことが問題になっている。その理由はやはり消費行動の変化に対応できていないことにあると思う。中価格の商品と同じように販売・宣伝をしていたのでは、逆にプレミアムの価値がなくなってしまう。今までゼミやマーケティングに関する本を読んだことを通して学んだ市場の原理とは相反する原理がブランドやプレミアム市場には存在する。新たな視点を得ることができたと思う。
 

0 件のコメント:

コメントを投稿