2009年5月21日木曜日

【書評】生き方【斉藤】

生き方 稲盛和夫

 世界的大企業である京セラとKDDIを創設した著者の稲盛さんが、よりよく生きるスタンスについて仏教哲学の視点で語る。
 結局、生きる上で大切なことは至極簡単なことである。小中学校で習った倫理や道徳である。利己を抑制して利他的に物事を考え、常に感謝の気持ちを忘れないこと。自分のことだけを考えるよりも相手の利益を考えることによって視野が広がる。しかし、物事はなるべく複雑に考えずにシンプルな原理を見出すことが重要だ。また、人生は考え方によって大いに変化する。ポジティブな考え方を阻むものとして「三毒(怒り、欲望、妬み)」があり、これらをいかに断ち切るかを考えなければならない。

 私は本書の内容にはあまり賛成できない部分がいくつかあった。特に「三毒」についてだが、それらを完全に断ち切らなければならない、という考えはあまり賛同できない。三毒はそれが自分の中に生じたとき、深くそれについて考え、よく味わうことが大切だと思う。「不愉快なこと」を声に、感情に出してみることで、何が不快をもたらしているのかを冷静に分析することができると思う。三毒を持ち続けることはもちろんよくないとおもうが、回避することがよいこととは思わない。
 逆に賛同できる点もいくつかあった。特に印象に残っているのは「自分が対面する出来事はすべて自分が考えていたことである。思うことが出来事を寄せ付ける」という考え方だ。やりたい、できる、と思わない限りチャンスもやってこない、ということだ。また、自分が考えるにも及ばないことは絶対にやるチャンスはない。これから生きていく上で、思考のレパートリーを広げることが可能性につながっていくのだと感じた。

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