2009年5月8日金曜日

テレビ進化論

テレビ進化論 映像ビジネス覇権のゆくえ/境真良

時代とともに変容していくテレビ産業のもつ影響力について、さまざまな例を挙げながら論じている。

テレビ産業を含む映像コンテンツ産業の勢力は、「流通力」と「創造力」がキーワードとなり、2つを手にしたテレビは自身のブランド力を生み出した。テレビ業界は磐石な影響力を築いたのである。
だが、その座は脅かされることになる。新たな時代の到来を、筆者は「デジタル二重革命」と名づけた。1つめの映像のデジタル化は、映像製作のコストダウンを意味する。2つめはインターネットによるデジタルネットワークの普及だ。デジタル二重革命によって、今まで映像ギョーカイから発信される電波をただただ受信するだけだった消費者が、簡単に映像を作って発信できるシステムがつくられてしまった。

ブロードバンド経由で番組が配信される、新しいテレビ視聴方法では「マイ・チャンネル」というものが実現できる。自分が好きな番組にブックマークをつけると、自分好みの番組をピックアップし、オリジナルの編成表を生成してくれるというものだ。コンテンツとコンテンツの関連性を見出して視聴者に提供するという発想は、アマゾンやグーグルなどweb2.0のもので、視聴者にとってはトップダウンの編成表よりも便利だろう。
テレビ放送が始まって以来、揺らぐことのなかったテレビチャンネルの仕組みが今なくなろうとしているのだろうか。マイ・チャンネルが普及すれば、広告費も番組ごとの提供に変わるし、テレビ局の概念を飛び越えなければより聴者に合った編成表など作れない。インターネットによるデジタル革命に、従来のテレビギョーカイは飲み込まれてしまいそうな気がして、空恐ろしくなった。
もちろん本書にもある通り、テレビ番組コンテンツの作り方が変化しても、その流れに一番近いのは、従来のテレビ製作ギョーカイであることに間違いないのだけれども。

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