2009年5月22日金曜日

【書評】脳と創造性「この私」というクオリアへ【内山】

『能と創造性「この私」というクオリアへ』茂木健一郎

人間に生まれてよかったぁと心の底から思えた。いろいろ専門的で難しい言葉も出てきたけど、すいすい読めた。著者のコンピュータができたからこそ、より一層人間のもつ創造性が求められているという考え方がとても好きだ。コンピュータがチェスで人間に勝ったという話を聞いた時、私はとても怖かった。コンピュータに振り回されて、淘汰されてしまう時代が来るのかなぁと思ってしまった。けれども、この本を読んで、それでも人間が持っている力は決してコンピュータと比較できるものではないと分かり、とても嬉しかった。

創造性は誰しも持っている。結果ではなくて、生み出すことが大切で、むしろ会話をしているだけで、創造性を発揮しているという。なんてポジティブな本、と思ったが、それが真実なのだろうと思う。大切な要素はいっぱいあったが、私が一番着目したいのは、創造性においては、他人との対話が重要であるという点である。人は一人では何も生み出せない。それは悲観的な意味でいっているのではなく、ただの事実である。いろいろな人と関わり、話し、刺激され、そうやって何かを生み出していく。それが人間というものなんだと思うと、もともと人が好きだったが、さらにいとおしく思えるようになったし、人々が生み出した創造物が、前よりも輝いて感じられるようになった。また、私が最近一番足りてないのは、考え事をする時間、つまり自分との対話だと思った。何もしないでぼーっとすることが創造性につながるというのは、正直意外だったが、たしかに退屈しているときの考え事は、のちにいいものを残すことが多い。忙しいとは言わず、息抜きに退屈してみたいと思った。

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