2009年5月29日金曜日

【書評】変われる国・日本へ【岸本】

 坂村氏は単なる技術者だとばかり思い込んでいたが、これほどマクロな視点で論じることができるのか、と感心してしまった。

 従来の日本は垂直統合モデルでの生産が非常に優れていた。垂直統合モデルは統合度の高い、完成された製品を組み立てるのに適している。戦後、一躍日本はものつくりの国として名を上げた。しかし、日本の高度経済成長によって賃金の上昇を招き、更には途上国への技術・頭脳の流出や、情報流通コストの低下によるアウトソーシング、オートメーションの進展、イノベーションの加速によるベスト・エフォート型が有利な状況になるなどで、従来のような垂直統合モデルは一部の製品のみ有効となった。その一方で以前から水平統合モデルを採用していたアメリカなどの先進国は追い風を受ける形で、特にICT分野で急成長を遂げた。

 本書ではこうした流れを認識せずに旧来の垂直統合モデルを支える日本の制度が日本全体の成長を妨げていると指摘し、アメリカ型の制度にそのままアジャストするのではなく、日本に適した形をもって導入すべきだとしている。

 このマクロな視点は最近ゼミで扱った日米の法体系の違いにも関連する。とりあえずグレーゾーンを許容し、未知の市場の可能性を探りやすくするアメリカのフェアユース規定の日本版を作るべきだという議論もより一層理解しやすくなった。

 気になったのはヨーロッパの扱い。大陸法的なシステムは共通しているが、その他の部分で日本とどう異なり、いかに国全体(あるいはEU)に影響を与えているのかが気になった。

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