2009年5月29日金曜日

【書評】イノベーションを生み出す力【宮村】

本書では、機会や組み立てラインが生産の手段であった「工業社会」から、それぞれの手や頭が生産の手段である「知識社会(創造社会とかなり似ている気がしました)」へと移行している現在の社会では、新しい「知識」を創出するイノベーションを方法論的にマネージメントすることで競争優位を保つ手法が展開されていた。

非常に分かりやすかったのは、知識を「形式知(コード化された知識でコンピュータなどに入力できる)」と「暗黙知(体験・経験・直感・洞察などから成るもの)」の2つに分け、この2つを組み合わせる事が重要であると言っている部分である。具体的には、表出化(暗黙知→形式知)・連結化(形式知→形式知)・内面化(形式知→暗黙知)・共同化(暗黙知→暗黙知)という4つの知識変換方法があり、形式知⇄暗黙知変換が行われる「内面化(頭だけでなく体でも覚えること)」と「表出化(発想を形にすること)」でイノベーションが起こりやすい。

また、知識社会で競争優位を保つには、従来的なコスト削減による利益追求は意味を成さない事も指摘されている。このことを説明するために、著者は「次元」という言葉を用いて、「次元の見えない(不過触で不可視な)価値」を追う必要性をうったえている。なぜならば、「次元」の見えるイノベーションは(物理的、技術的に追随が可能なので)いずれコモディティ化してしまい、限界を向かえるからだ。いかにして新しい次元を切り開く、あるいは現在の次元を破壊するか、このことが求められる時代であることを感じました。

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