2009年5月25日月曜日

【書評】新聞社 破綻したビジネスモデル【斉藤】

 新聞社 破綻したビジネスモデル 河内孝

 本書は毎日新聞の経営の要職を歴任してきた河内氏が同社退職後に「新聞の生き残り」に危機を感じて書いたものである。河内氏は、同社で新聞の生き残りをかけた改革を進めてきたが、失敗に終わった。その改革時の戦友やこれからの新聞改革の担い手に向けて本書を執筆した。

 「新聞広告の価値とは何か」。先日の広告特殊講義のグループワークの時間のこと。「信頼性があること」と私たちの班は何のためらいもなくその問に答えを出した。紙媒体だから。文字は信用できるから。新聞はんぜかメディアのなかで「誠実」というイメージが作られている。私たちは新聞の内容が誠実であることを期待する。しかしいくら内容が誠実であっても決して新聞は慈善事業ではない。ビジネスだ。内容がどんなによくとも売れなければ新聞は生きていられない。
 私はあまり新聞もひとつのビジネスであるという認識をしていなかった。読者の減少など新聞に対する懐疑論を耳にすることが多いが、それは新聞の裏側の世界、つまりビジネスモデルに問題があるということだそうだ。ビジネスモデル(特に部数至上主義)を立て直すことから改革を進めよう、と河内氏は考えている。特に「読者は活字離れしたのではなく新聞離れしたのだ」という言葉が印象に残っている。現在広告が変化をしている。私たちの消費活動の変化に柔軟に対応して、クロスメディア手法が活躍している。ならば、新聞も消費者(読者)に合わせて変化するべきだ。しかし、本書でも述べられているように、新聞が眼の敵にするべきなのは他のメディアではなく、大手新聞社の「新聞にたいしてコンサバティブな考えを持っている上層部の人々」なのだ。前回の輪読でやった「イノベーターのジレンマ」を思い出した。大きな組織では規定の組織が改革を拒む。河内氏はまさにそのジレンマにあっていたのだろうと思う。
 ビジネスモデルが破たんしている、という事実はこの本を読んで理解した。そして新聞はすべてにおいて「誠実」という固定観念もなくなった。しかし、新聞社がより読者のことを理解して順応しようと接近してくる限り、まだ新聞はその「誠実」性を取り戻すことができる、と思う。 今まで新聞を敬遠というか観念的にしか見ていなかったが、この本を通してビジネス的な面を垣間見ることができた。

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