2009年5月31日日曜日

【書評】ハイコンセプト【戸高】

ダニエルピンク著・大前研一訳『ハイコンセプト』

 農業の時代から、工業の時代、そして情報の時代が終了し、コンセプトの時代が到来している。BRICs諸国が経済力をつけてきており、先進国は情報産業においてでも優位をとることが難しくなってきてしまった。それは賃金に先進国とBRICs諸国に大きな違いがあるからだ。
 そんな時代だからこそ求められるのが、「ハイ・コンセプト」と「ハイ・タッチ」の能力である。その能力は具体的に6つに分かれており、
1:機能+デザイン
2:議論<物語
3:個別<全体の調和
4:論理ではなく共感
5:まじめだけでなく遊び心
6:モノ<生きがい
 である。これら6つの感性が我々の生活をより豊かにし、ビジネスにも直結してくる重要なポイントなのだ。

 たとえば、自分たちの身の回りにある商品を見ていても、6つの感性のうちのどれかを満たしていることがよくわかる。
 i-podを例にとってみよう。岸本君が初めのオープンゼミでプレゼンをしてくれたように、従来の音楽プレーヤーとは違い、そのデザイン性や、またCMも音楽を通した楽しい人生といったように、共感を呼ぶものになっている。
 本著の中にも、トイレのブラシまでもが有名デザイナーの手による商品になっているというのだから驚きだ。多くの商品があふれるこの時代では価格による差別化か、その商品がもっているデザイン性による差別化のいずれかで立ち向かわねばならない。BRICsが前者で、先進国は後者で勝負をしているのが現状であろう。
 また、本著の中の言葉に、「モノを作り出す前に、そのアイデアやコンセプトがオリジナルのものなのか、それには本当に価値があるのかどうかを自問してみること」というものがあった。
 これはCreative = New + Meanigful for Societyに一致する言葉であろう。以前読んだ、齋藤孝氏の『天才を読む』にも、天才はただの狂人じみた性格では天才とは言えない。といった旨の言葉があったのを覚えている。そのデザインやアイデアが奇抜なものであるだけでは社会にとってなんの意味もなさず、Creativeとは言うことができないのだ。
 それと、日頃から心がけようと思ったのはストーリーテリング、物語に関することだ。プレゼンをする際にも、もちろん論理的思考、話術は話の骨子を創る際には重要だ。しかし、それだけでは人々を満足させることはなかなかに難しい。
 そこで、共感を誘うような具体例や、比喩を用いたりするなどして、1つの物語であるようなプレゼンができれば、自分のコンセプトを理解してもらうことができるだろう。
 最後に、生きがいについてだが、この本の中では「生きることは生きがいをみつけること、意義を見出すこと」だと書いていたがまさにその通りだろう。
 よく巷で「なんで生きているのかわからない。」「人生の意味ってなんなんだろう。」といったような発言を耳にすることがある。そんなことを気にしていることすらばかばかしい。
 生きるや、人生といったようなことに意味などない。人生に意味付けを行っていくのが人間だからだ。その小さな意味付けがいずれ関連して成功や失敗、幸せや不幸を呼ぶのだと思う。
 そのためには日々を丁寧に生きていくことがやはり必要になってくるのではなかろうか。

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